パリには、あらゆるジャンルのすてきなお店がいくらでもあります。でも堀江さんといっしょに訪ねるなら、職人のいる工房と小さな専門店だろう、ということで、今回の取材をコーディネートしてくださった飛幡祐規さんもいっしょに、ふだん雑誌ではあまり取り上げられないような、ちょっと面白い専門店をいくつか取材しました。

まずは11区、バスティーユ広場の東側にある革張り職人の工房「アトリエ・フレ」。家具職人の工房がいまもたくさん残っているシャロンヌ街という通りからちょっと入った、パサージュ・ロムという小路に、この工房はあります。創業は150年ほど前で、現在の主人のマリー=ジャンヌさんは、まだ小さな娘さんを二人育てている40代前半の女性です。午前中の開店まもない時間におじゃますると、小路には、まだ朝のすがすがしい空気が満ちていました。

重い鉄の扉がすでに開け放されていて、青い作業着姿の女性が奥の大きなテーブルで仕事に取りかかっていた。……工房に一歩足を踏み入れると、埃と革と蜜蝋の入り混じったなんともいえないにおいが、うっすらと鼻を刺激する。もっと重厚な、古色蒼然とした薄暗い穴蔵のようなところを想像していたのだが、入り口の左側がほぼ全面パサージュに面したガラス窓になっているため、とても明るい。……

壁一面に、革に金箔の模様を型押ししていくための「ルーレット」という道具がずらりと掛けられていました。ほとんどが19世紀のもの、なかには18世紀のものも混じっているそうです。マリー=ジャンヌさんのような革張り職人=「ゲニエ」は、いまではパリでもわずかになってきているので、アトリエ・フレには、国内だけでなく、各国から家具の修復の依頼が飛び込んできます。わたしたちの取材中も、オランダからトラックで仕上がった大テーブルを取りに来た人たちがいました。そのマリー=ジャンヌさんの仕事ぶりを伝える堀江敏幸さんのレポートが「ルーレットが歌っている」。ぜひごらんください。

そのほか、あらゆる木製品のための塗料を扱う日曜大工好き垂涎の「ラヴェルデュール親子商会」、パリで唯一、手刺繍のクロスを扱う専門店「ヴィザヴィ」、あらゆる穀物を扱う「市場のグレヌトリー」、世界中のおいしい食材を集めた「シュル・レ・ケ」、そしてカルチェラタンのピアノ工房「マンソー=ギュムノー」をご紹介しています。こちらもお見逃しなく。