Kangaeruhito HTML Mail Magazine 384
 
 4月1日、大移動の日

 新年度が始まりました。4月1日付で、「考える人」が所属する出版部に新しい編集部ができ、また人事異動も少なからずあったため、今朝から大幅な席替え作業が行われています。ふだんの出版部は、それぞれの机や棚のみならず、足もとや引き出したままの引き出しの上に本だの書類だのが堆積し、ときには熊手やラケット、使用済みの写真パネルなどがさらに「野積み」されていて、それはもうひどいものなのです(もちろん私もその「ひどいもの」の一員)。

 この数日に運び出されたゴミの量たるや、たいへんなものでした。しばらく前に編集部全体のレイアウト変更が宣言されて以来、着実に毎日少しずつ片付けを進めていた人、昨日の夜遅くから短期決戦で臨んでいる人、なんとなく呆然としている人、それぞれ温度差のあるなかで片付けは行われ、昨晩遅くゴミ出し作業はほぼ終了(……したはずですが、まだゴミ屋敷状態の人も)。

 今朝からは否応なく机の大移動が始まっています。それほど広くない空間での移動なので、一度に動かすことはできません。私は午後1時現在、自分の机の旧来の位置で待機中。私の机のまわりは妙に見晴らしのいい状態になっています。

 先週末の土曜と日曜は、朝から夜まで自分の机のまわりの整理をしていました。たまりにたまったものは、紙の量が圧倒的に多い。不要になった初校ゲラ、レイアウト用紙がそのまま残っていたり、インタビューのために大宅文庫から取り寄せた大量の資料、インタビューのテープ起こしのプリントアウトなどが、封筒やクリアファイルに入った状態で、手提げ袋にまとめて入れられたまま忘れ去られて眠っている。

 紙の作業で気をつけなければならないのは、紙で手を切ってしまうことです。紙で手を切るとなかなか治りません。軍手を両手にはめて、ホコリを吸わないためのマスクもして、ひたすらごそごそと作業を続ける。

 よくもまあこんなにためこんだものだと自分にあきれます。とにかく捨てるしかない。捨てる方針で臨むのはいいのですが、具体的作業の過程で絶対に捨ててはいけない書類や手紙がまぎれていたらたいへんです。ドサッ、ドサッと固まりで処分したいところも、パラッ、パラッと一枚ずつチェックしながら作業を進めるほかありません。

 作業の手がとまるときもあります。作家との取材旅行中のなつかしい記念写真が出てきたり、「考える人」編集部の亡くなった同僚からのメモが出てきたり、そのたびに作業は中断して、なんとなくぼんやりする時間もありました。それでも丸二日作業を続けると、机のまわりがだんだんとひらけてきて、机の下の足もとにも広大な空間ができ、足をぶらぶら動かしてみたくなってくる。

 さて、今日の午後。作業を中断し、早めの昼ごはんを食べ、来客があって30分ほど席を外して戻ってきたら、私の机と席の移動が終わっていました。今日はメルマガの締め切り日なので、ざわざわと引っ越し作業の続くなか、とりあえずまたパソコンを立ち上げて、このメルマガの原稿を書こうとしたところ、パソコンは立ち上がるものの、ネットにつながっていないことが判明。これでは原稿が送れない。

 ネットワーク室の担当者が机の下にもぐりこみ、配線を確認していると、「プリンターがつながっていません! 急いで見てください」と別の場所で緊急事態も発生。冷静な担当者は優先順位を考えて、あっちへ行き、こっちへ戻りを繰り返しています。ご苦労さまです。

 今の私の状態は、机の下の足もとがさっきまではぶらぶらと足を動かすことのできる広大な空間だったのに、今は移動した机の中心点がたまたま電源センターのようになっている場所だったため、レンガ大の大きさのコンセントがふたつゴロリと横たわって、あちこちから命綱のような顔をした配線が伸びている。私が突然、足もとをばたばたさせたら、編集部員のパソコンの電源が全部切れてしまうような状態です。

 昭和32年に完成した新潮社本館ビル(のちに一部増築)はもちろんインテリジェントビルではありません。床にはいろんな線が這い回り、いままで机の下になっていて見えなかったために、はがれたままになっていた無残なリノリウムが出現したり、かなりぼろぼろの状態。私が生まれる1年前のビルですから、今年53歳。あちこち故障が出てきたり、使えなくなったりするところがでてくるのもあたり前かもしれません。

 私も今朝、健康診断の再検査があって(今日は会社の“行事”が多い日です)、血液を採られました。いままで再検査にひっかかったことはなかったのに、やはり年ですね。健康診断結果に「要観察I」「要観察II」と刻印を受けた項目が増えました。やれやれ。

 とにかくメルマガをこれで書き終えたので、これから夕方までかかって片付けをして、仕事再開です。
 
「考える人」編集長 松家仁之(まついえまさし)
Copyright 2010 SHINCHOSHA (C) All Rights Reserved