糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」をご存じでしょうか。毎日のアクセス数が140万にもなる人気のウェブサイトで、インタビューや対談などの読み物を毎日のように更新しつつ、Tシャツや腹巻きなどのオリジナル商品の通販も行っています。

 サイト上の連載を単行本化した『言いまつがい』や、「ほぼ日手帳」などのベストセラーも数々送り出し、そのいっぽうで、吉本隆明氏の膨大な時間におよぶ講演音源のCD化など、既成の出版社では実現が難しそうな企画もつぎつぎと送り出しています。

 70年代から90年代にかけコピーライターとして活躍した糸井重里氏が、10年ほど前にコピーライターを“廃業”し、スタートさせた「ほぼ日」は、出版社でも新聞社でも通販会社でもない、なんとも名付けようのない新しいものです。糸井氏はこの約10年、何を考えてきたのか。

 最新号の特集「活字から、ウェブへの……。」では、トップバッターに糸井さんにご登場願い、ロングインタビューを行いました。その一部を以下にご紹介しましょう。

「お客さんがたくさん来るか、来ないかという問題では、手招きして呼び寄せる方法ばかりが語られているような気がしますね。手招きする筋肉ばかり発達させても、長続きしないんですよ。たぶんいつかくたびれてくる。
 女の人は、靴を買いに行くときに、三軒寄ってみたけどやっぱりやめた、ということがあり得ますよね。でも、五十歳前後の、会社勤めの忙しい管理職の男だと、一軒目で『せっかく買いにきたんだからこれでいいや』と買ってしまうんですよ。前者と後者とでは、かけているコストと情熱と知識に、ものすごい差があるわけです。しかし靴をつくっている現場の上司っていうのは、あきらかに後者なんですね。
 靴を探して三軒まわった女の人が四軒目に入った店が、表通りではなくて、よっぽど目的があって来ないかぎり誰も通らないような場所にあったとします。でもその小さな店に、まさに彼女がイメージしていたような靴があったとする。彼女はいずれまたこの店に来るでしょう。しかし靴を買うのなんて面倒くさいことでしかない、買い物の楽しみを忘れた男なら、路地裏にある小さな靴屋を見て、『こんな場所じゃ商売にならんだろう』って必ず言いますよ。肝心の売っている靴の様子とか、お店の人の対応とか、店のなかの雰囲気とか、まったく見もしないで。
 そういうことを言う人は、いつもお客さん以外の人たちなんです。買いに来ない人、お客さんではない人が言うんですね。売っているものの魅力なんて、考えもしないし、わからない。路地裏に誰が来るんだって言うけど、いっぽうで駅前がシャッター商店街になっていたりするわけです。いちばんの人通りのある、昔だったら無条件で地価も高かった場所が、もうはやらない。それはどうしてなのか」

 このつづきは、10月3日発売の「考える人」でぜひごらんください。