「活字が読まれなくなった」とか「活字離れ」などというときに使われる「活字」とは、元来、木や金属でできた四角い柱の頭頂部にインクを塗って紙に押し付け、文字を印刷するためのもの。要するに、ハンコと同じ原理です。活版印刷は、この活字あってこその印刷術です。

今回取材した内外文字印刷株式会社は、東京板橋の町工場が並び立つ一角にあります。工場を訪ねると、壁面はあたり一面活字で覆われていました。大人の背丈ほどの高さの棚に活字ケースが収められ、その中に活字がぎっしり埋まっているのです。この場で一字一字活字を拾って版が組みあがるのですから、デジタル化された原稿をコンピュータのモニターを介して印刷する電算写植やDTPに比べると、情報の存在感や臨場感がまったく異なります。

内外文字印刷の【ご案内】というパンフレットにある文章を引用します。

 大方の書籍造りから今、遠い世界の活版印刷となっておりますが……多くの作者からのお褒めのお言葉が沢山あることも知らされ、勇気を持ってこれからも――どこまでもグーテンベルク――で金属活字活版印刷の本造りを続けていくことが出来ます。

どこまでもグーテンベルク」がゴチック体で強調して組んであるところに、550年前にグーテンベルクによって確立された活版印刷の技術を、いまも継承する者の誇りと気概が感じられます。

漂うインクの匂い、ぎらぎら輝く鉛の活字、反転した文字の字形の陰影……、金属活字印刷の現場を、二十二歳で活字の母型作りを始め、半世紀以上、金属活字の道を歩んできた小林敬さん(七十五歳)の熱い語りを交えながらリポートした「手作業で文字を組む、活字をつくる」をぜひご覧下さい。