「活字から、ウェブへの……。」特集では、これまでにご紹介した糸井重里さんのロングインタビュー「ここにいることがうれしい」のほか、さまざまな分野の6人の方々にお話をうかがっています。その一部をご紹介しましょう。

解剖学者の養老孟司さん

「紙に印刷されて発表される文章と、ネットにのる文章は、どうしたって違ってくるはずなんです。ネットの場合は明らかに、反論を予測しながら書くことになりますから。……ウェブは、書いたことにかなり悪口を言われますからね。しかも、新聞や雑誌とちがって反応がダイレクトだから、書いたほうもついつい悪口を読まざるを得なくなる。……反論を予測しながら書くとどうなるかというと、これは官僚の作文に近くなっていきます」

作家の水村美苗さん

「ウェブの発展というのは、本の流通のしかたは別として、書くという行為においては、学者はともかく、小説家にとっては、さほど本質的な現象ではないと思っています。『日本語が亡びるとき』を書いている最中は、必要に迫られウェブでいろいろ調べました。……ところが、小説を書くには、小さいころの記憶をどう呼び覚ますかとか、過去の古典をどう継いでいくかとか、そういうことのほうが大事なんですね」

詩人の谷川俊太郎さん

「詩を発表する場所としてウェブを考えたことはなかったのですけれど、糸井重里さんの『ほぼ日刊イトイ新聞』で『谷川俊太郎質問箱』という人生相談みたいなのを連載していたご縁で、ウェブで詩を発表するのも面白いなと初めて売り込んだんです。そうしたら糸井さんが連載という形を考えてくれて、それが新鮮でしたね。一篇の詩を連載にするなんて、考えてみたこともなかった」

フランス文学者の宮下志朗さん

「ボッカッチョ、ペトラルカ、ダンテといった十四世紀のルネサンス文学は、活版印刷が発明される以前の文学ですから、手で書いて写す『写本』で刊行されていました。……活版印刷が革新的な発明でまったくあたらしいメディアであったとしても、当初は古いメディアである写本とそっくりなものをつくろうとしていた……写本はそれぐらい完成度の高い美しいものだった」

マガジンハウス最高顧問の木滑良久さん

「雑誌が売れないのを不況や携帯電話やウェブのせいにするのはよしたほうがいい。つくる側に原因があるんです。……『国境なき医師団』じゃなくて、『出版社なき編集部』っていうのかな。編集者は自分の血となり肉となっているものから湧きでてくる、本当にいいと思うもの、好きなものをつくらなくちゃ。そうでなくちゃ、誰の心も動かせない。ものをつくるってそういうことです」

「紙メディアは、将来、今の銀塩カメラのような存在になっていくかもしれません」というインフォバーン代表取締役会長の小林弘人さんのエッセイは、全文をウェブ上でごらんいただくことができます。どうぞごらんになってください。