普通の人間は、脳が持つ潜在的な力の10パーセントくらいしか活用出来ていない、とよく言われます。天才と言われるアインシュタインでさえ、30パーセント程度だったとか。
 どうやって測っているかは分かりませんが、とにかく、私たちの脳はまだまだ余力を残している、ということは言えると思います。実際、「自分は脳をフルに使っているぞ」と自信を持って言える人がどれだけいるでしょうか。
 とはいえ、何をどうすれば10パーセントが30パーセントになるか分かりませんし、下手をすれば使わなくていい危険な領域を刺激して、とんでもない事態を引き起こすかもしれません。
「頭が良くなりたい」という願望は、「成績を上げたい」という子供の頃の素朴な願いから始まって、延々まとわりつくものです。
 しかし、翻って考えてみると、そもそも「頭がいい」というのはどういうことなんでしょうか。学生なら「成績」という一つの目安がありますが、そんなものが実生活で何の役にも立たないのは皆さんご承知の通りです。

 そこで、「頭がいいとはどういうことか」を考えるところから始めてみよう、というのがこの連載の一つの眼目です。考え方一つ、物の見方一つで、世界はいかようにも姿を変えて眼前に現れます。
 ただし、そのためにはちょっとしたコツが必要で、吉成さんは身近な例を使って、それを分かりやすく説明してくれます。しかも、最新の脳科学の裏付けを密かに含ませて。

 吉成真由美さんは、サイエンスライター。マサチューセッツ工科大学やハーバード大学の大学院で、脳について研究していました。元NHKディレクターでもあり、様々な番組を作っています。
 新潮選書からは『やわらかな脳のつくり方』という、この連載の前身にあたる本が出ています。「脳の話か、難しそうだな」と身構えず、是非お手にとってみて下さい。難解だと感じる部分は、ほとんどないはずです。
 それよりも、酒の席で思わず話したくなるような常識を覆す面白いエピソード満載で、目から鱗が落ちまくること請け合いです。

 新連載第1回目も、いきなり野茂投手と映画の話をする場面から始まります。野茂選手の話がどうやって脳に結びついていくのか? それは、是非「考える人」第4号でご確認下さい。
 読んでいただければ、今まで10パーセントだった脳の稼働率が、11パーセントくらいにはなるかもしれません。