長沼毅さんに執筆をお願いするため、広島大学を訪れたのは今から3年前でした。研究室のある東広島キャンパスは日本で3番目に大きな敷地面積があり、バス停から研究棟に辿り着くまでだいぶ時間がかかりました。
初対面で「ずいぶんでかいキャンパスですね」と感想を述べると、答えは「だから広大(こうだい)と呼ばれているんだ」。さっそく一本取られた気分。その時に手渡された名刺には「辺境生物学者」という謎の肩書きが印刷されていて、地球の果てまで生命の根源を追い続ける長沼さんの研究者魂がそこに表明されているようでした。
連載の第三回では、「オオグチボヤ」という奇妙な形をした生物の写真が掲載されていますが、これは長沼さんが富山湾で発見されたこのホヤの大群落を調査するため深海調査したときのもの。サハラ砂漠やパタゴニア氷河、中東のオマーンにある砂漠の中のアルカリ泉、あるいはグリーンランドなど、どんな辺境にも足を踏み入れて、奇想天外な生物を訪ねているので、なかなか連絡を取るのが大変そうだと心配していたのですが、どこからか原稿は私のパソコンに届くのは、飄々としながらも律儀な長沼さんの性格を物語っていそうです。
連載を始めたきっかけは、長沼さんがいろいろな場所で多様な生物の「かたち」を前にしながら、そこに共通する法則性があるのではないだろうかと思ったことが元になっています。「かたち」という補助線を引くことで、多様と単一性を結びつけ、生物の起源を知る突破口がないかという一ひねりした考察が連載の読みどころでもあります。
最新号では、ハチの巣の六角形が極めて高度な数学に理がかなっていることが紹介され、次回は、動物の「逸脱した形」としてカメの甲羅を取り上げます。長沼さんによると、カメの甲羅には、「カタチの進化」のダイナミズムを探る重大な鍵が隠されています。そこでクイズです。
カメの甲羅はどのようにできているでしょう。
1、背中の皮膚が硬くなってできた。
2、骨が変形して繋がった。
3、外側に押し出された筋肉が固まった。
カメという異形の脊椎動物に注目して、次号も生命の謎を探る冒険へ出かけましょう。