椎名誠さんの連載『水惑星の旅』が次号で最終回となります。連載が始まったのがちょうど2年前の2008年。その年の夏――8月8日から24日まで――北京オリンピックが開催されました。人によって大会の記憶はまちまちでしょうが、私がとにかく印象的だったのは、「降雨のコントロール」でした。ご記憶の方も多いかと思いますが、開会式の行なわれた北京国家体育場の上空にかかりそうな雨雲を、ヨウ化銀を使い刺激して異なる場所に雨を降らせてしまったのです。
 ニュースを聞いた時は、「そんなことできるのか」と思ったものですが、調べてみるとそうした技術はそれほど難しくはありません。「水惑星」の取材チームは、人工降雨について気象庁に取材をしてそのことを知りました(次号に掲載)。現在では世界で40カ国以上がこの研究を行なっております。もちろん日本でも可能なことなのですが、「降らせること」も「やませること」も、精度に問題があるので実用化はされていません(アメリカでは降雨会社があるそうです)。
 ただ、ものすごく精度が上がって日本でも実用化できたとしても、人間がそこまで自然をコントロールしていいものかどうかはまた別問題だと思います。
 最終回である次号は、今号に引き続いて熊本県の球磨川、川辺川を下ります。そこで目にしたのは、日本のどこにでもある光景――ダム――でした。ダムは、人間が「水をコントロールする」技術の典型です。狭く、急峻な川の多い日本では、「金を生むこと」(いわゆる利権)もあって、たくさんのダムを目にします。
「水問題」のひとつの真理は、「循環していること」です。どこかで枯渇すれば、どこかで洪水を生みます。誰かが得をすれば、誰かが損をします。天につばを吐けば、それはいつか自分の顔にかかってくるのです。「コントロールできること」の裏には、そんな真理が隠されています。
 アマゾン川本流にはダムがありません。川が強大過ぎてダムが造れないそうです。畏怖されている大河が、世界で一番きれいな川といわれているのはどこか皮肉めいています。
 世界の川を旅してきた椎名さんが、連載の最終回をどんな言葉で締めくくるのか、楽しみにしてください。