南條竹則さんの探求

 ドリトル先生の物語について、どなたか今までに書いておられるのでしょうか? 福岡伸一さんに私がそんなことを聞いたのは、今回の特集企画について打ち合わせを始めてすぐのこと。その時、「これを読むといいよ」と渡されたのが、南條さんの『ドリトル先生の英国』(文春新書)でした。
 書かれていたのは、徹頭徹尾、ドリトル先生への熱い情熱でした。小学三年生のときに親類のおじさんが『ドリトル先生航海記』をプレゼントしてくれました。それがきっかけで読み始めた途端、魚貝語の研究に打ち込む先生の姿にすっかり魅了されてしまったといいます。
 そんなドリトル先生への積年の思いをこめたこの本に対して、『ドリトル先生』の翻訳を井伏鱒二さんに勧めた児童文学者の石井桃子さんからは丁寧なお礼状が来たそうです。「(ドリトル先生シリーズは、こんな風に後年に解説をされて)仕合せな本だ」と。その印象的な内容は、達筆な手書きで、写真とともに本誌に掲載されています(p.71参照)。
 南條さんのドリトル先生探求はその後も続きます。雑誌の取材(『SKYWARD』2008年4月号「イギリス ドリトル先生に誘われて」)で現地への取材も敢行。ヒュー・ロフティングの故郷のメイドゥンヘッドはもちろんのこと、食通の南條さんだけに、ドリトル先生が好物のポークパイの町、メルトン・モーブレーにまで足を延ばしたのでした。現地への取材のみならず、多才な南條さんですから、『ドリトル先生 アフリカへいく』を、伝説的な画家・茂田井武さんの幻燈絵と共に、温かい絵本に仕立てています(集英社)。また翻訳者としても『ガブガブの本―「ドリトル先生」番外篇』(国書刊行会)という、豚のガブガブ(愛くるしい食いしん坊)を主人公にした番外編の物語も世に送り出しています。
 その「ドリトル活動」(?)は、本誌が出た今も続いており、100歳のおばあちゃんと動物たちが仲良く暮らすヒュー・ロフティングの絵本『タブスおばあさんと三匹のおはなし』(集英社)がちょうど翻訳されたばかりです。南條さんの活躍からは、ますます目が離せません。