カメラ付き携帯電話の登場以来、誰でも、いつでも、どこでも簡単に写真が撮れる状況に、ますます拍車がかかる今日この頃。ふたつの写真の連載が、2016年春号からスタートしました。トップバッターとトリという誌面での立ち位置のように一見対照的ながら、どちらも“なかなか撮れない”写真という点で肩を並べます。

「圏外写真家」では、都築響一さんが毎号一人の写真家を紹介してくれます。頁を開くといきなり「圏外」というのもなんですが、雑誌や写真集で見慣れた写真でもなければ、ネットにあふれる素人写真でもない、まさに「圏外」としか言いようがないのです。第1回を飾るのは、不動産の写真を撮る仕事をしながら、つねにカメラを首から下げ、スナップショットを撮り続けるオカダキサラさん。ひとは写真を誰でも撮れると勘違いしているが、「撮れる」と「撮る」は全然違うと都築さんは言います。オカダさんが「撮る」奇跡の瞬間は、実際の誌面でお楽しみください。

 

 そして田原桂一さんの「光の意志」。1970年代から写真で「光」を探究してきた世界的写真家が、80年代に撮影しながら未発表になっていたシリーズです。出雲、秋吉台、富士宮の白糸の滝、玉置山、精進湖(しょうじこ)など、日本各地の名所が被写体なのですが、どれもこれまで見たことのない光景となっているのには驚くばかり。実はそのすべてが、夜に撮られたものなのです。電源車からケーブルを延ばして照明を焚くため、スタッフ15名ほどを必要とした大掛かりな撮影は、今日ではとても考えられないでしょう。闇と光と大自然が三つ巴となって現出させる異界。誰も知らない「日本」がここにあります。