アルビル中心地の広場、声をかけてくれた父娘。
 

 ドーハから飛び立ち、約2時間。眼下の風景はいつの間にか、雪の解け残った山脈から赤茶色の大地に変わっていた。小さな機体が目指しているのは、イラク北部の街、アルビル。この街に降り立つたびに、その時間の流れがあまりにも違うことに、最初は戸惑ってしまう。

 「ここは初めてなの?」「迎えはちゃんと来るのか?」と絶えず誰かが話しかけてくる。「入国カード書いた?」と勝手に周りが心配してくれる。外国人だからと物珍しく見てくるわけではない。その言葉の掛け合いが、ごく自然に、日常の中にあるのだ。

 バスに乗れば話しかけたそうにもじもじしている男の子と、くすっと笑うお母さん。「いいから、いいから!」とおじさん(ほとんどおじいさん)がおばあさんに席を譲る。きっとこれが”自然”であるはずなのに、日本から来たばかりだとあまりに”濃密”に感じてしまうのだ。

 この地から流れるニュースはいつも、数十キロ先に迫るISの脅威ばかりだ。だからこそこの地に身を置き、そしてその空気の中で呼吸する度に、人々の手で守られている日常が愛おしくなる。そんなこの街に私は思わず、「ただいま」を口にしてしまうのだ。

ほっとする場所の一つ。アルビル城から広場を見下ろす。