特集の冒頭を飾るのは、兵庫県の山奥にある曹洞宗・安泰寺の生活を追ったレポートです。
 このお寺の住職は、著書『迷える者の禅修行』(新潮新書)でも知られる、ドイツ人禅僧のネルケ無方師です。安泰寺は、人里離れた山中にあり、「檀家ゼロ、自給自足の生活、坐禅三昧」を実践する、いまどき珍しい本格的な修行道場です。また、このドイツ人住職を頼って世界中から人が集まり、取材時(2010年11月)にも、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、カナダ各国からの参禅者が滞在していました。
 その様子を、カラーグラビアで紹介しながら、ネルケ師にインタビューをしました。
 なぜドイツ人青年は日本に来てお坊さんになったのか? なぜ自給自足の生活でなければいけないのか? 檀家もおらず葬式もしないでお寺と言えるのか? はたしてそれは仏道なのか? 
 ネルケ師にそのような質問を投げると、反対に問いかけられました。
「では、おうかがいします。あなたの考える仏道とは何ですか? お経を唱えないと仏道じゃないのか。袈裟をつけなければ仏道ではないのか。葬式をしないと仏道ではないのか」――。
 賞味期限の切れた葬式仏教に目もくれず、山奥で孤軍奮闘するドイツ人禅僧の、そんなしずかな叫びが聞こえてくるレポートです。