養老孟司さんとお茶の世界。この組み合わせに驚かれた方がいらっしゃるかもしれません。それがそうでもないのです。
 対談のお相手は、三千家のひとつ、武者小路千家の家元後嗣、千宗屋(そうおく)さん。千さんは『茶 利休と今をつなぐ』(新潮新書)を出されたばかりでした。この『茶』を読まれた養老さんが、「実はね、ぼくはお茶が大好きなんですよ」と「考える人」に耳打ちしてくださったことから対談企画がスタートしました。「お茶って茶の湯のことですよね?」と念を押しながらも、千さんにご相談をしたところ、「ちょうどもうすぐ初釜です。ぜひいらしてください」と嬉しいご招待をいただきました。
 初釜というのは、新年に行われる茶会のこと。卯年の本年は、兎尽くしの初釜となりました。さて、そんなすばらしい装飾品や道具の数々を見ながら、養老さんが考えていたことはといえば……それはなんと、茶道具と虫の共通点! 千さんからは「利休と虫にはたくさん共通点があるんです」との切り返しもあり、話は思わぬ方向へ。
 養老さんにとっての「虫」は世界を見るときの視座に他なりません。その視座が茶の湯と通じるものを持ち、共通点を掘り下げていくと、日本人の感覚の何たるかに結びついていくというのです。
 異なる世界のふたりが、年齢もジャンルも超えて意見を交わす光景はなんともすばらしいものでした。ぜひその過程を味わい読んでみてください。千さんは「考える仏教」特集で「茶と仏教」の原稿も寄稿くださっています。

武者小路千家 官休庵のHP(お稽古の案内や千宗屋さんニュースなど)
http://www.mushakouji-senke.or.jp/