夏目漱石といえば言わずと知れた文豪です。が、作家になる前の英語教師・夏目金之助もなかなか大した先生でした。秋号の小特集「人生で大切なことはみんな漱石先生に教わった。」では、人生の師・漱石にスポットライトをあてました。

 まず、漱石はどんな先生だったのか? 『英語教師 夏目漱石』(新潮選書)の著作がある川島幸希さんに教えてもらいました。秀明大学学長の川島さんは近代文学初版本コレクターとしても知られ、11月12日と13日に行われる秀明大学飛翔祭では、その貴重なコレクションが初公開され、かつ、漱石の初版本プレゼントもあるそうです。川島さんによると、漱石自身が「教師の資格がない」と書き続けるものだから、いい加減だったような印象を与えるけれど、実はとても熱心で優秀な、熱血先生でもありました。「理想の教師」でもあったと川島さんは言います。

 では、その英語力はいかほどのものだったのか。川島さんの本にも紹介されている東北大学附属図書館所蔵の漱石の直筆を、医師の向井万起男さんと一緒に見に行きました。漱石の流麗な筆記体と洗練された英文は、ぜひ誌面でご覧いただきたいのですが、漱石生誕100年の今年は東北大学でも「漱石文庫」の一部が11月11日まで公開されています。見せていただいた資料の中で、向井さんが打ちのめされたのが、漱石が実際に使っていた英熟語表現集。辞書のようなこの本の余白にはびっしりと書き込み(もちろん流麗な英語!)があり、漱石が英文学にかけた情熱が伝わってきます。

 さらに特集では、劇作家の山崎正和さんが、「木曜会」という「流派や利害のない」サロン的な集まりを消極的に主宰することになった漱石について鋭く分析してくださいます。弟子に慕われ、押される形から始まったとはいえ、そこには師弟、あるいは教え子同士の濃密な人間関係があった。いま改めて木曜会的なつながりを考える意味を山崎さんは提起しています。

 この他、漢文から考える漱石の人となり(中国文学者・高島俊男さん)、あるいは落語(落語家・柳家小満んさん)、俳句(歌人・山田航さん)、絵画(作家・中野京子さん)と、様々な角度から漱石が残していったものを考察いただいた「わたしの漱石先生」も、読み応えたっぷりです。

 きっと漱石作品を読み直したくなること請け合いの漱石特集第2弾、お楽しみください。