昨今、「風流」ということばがめったに聞かれなくなった。戦前は企業の経営者や商家の大旦那、地方の庄屋などが「風流」の担い手だったが、現代の風流人はさてどこへ行ったのか――。

 そんな疑問を抱いたベテランライターの千葉望さんが、現代の風流人を探し出し、その生き様と、彼らの生き方が私たちに示す大切なものを教えてくれる新連載が「風流人をさがして」です。千葉さんが会いたい人として真っ先に訪ねたのが、日本のインターネットを牽引してきたIIJ(インターネットイニシアティブ)会長の鈴木幸一さん。鈴木さんの風流は、自分を育ててくれた上野の街を舞台に、世界から超一流の音楽家を招いて毎年春に一ヶ月にわたって開く「東京・春・音楽祭」。

撮影・菅野健児


 博物館や美術館が建ち並ぶ上野という街の特性をフルに活かし、東京国立博物館や国立科学博物館のロビーなども使ってコンサートを開くという音楽との新たな出会いの場も作り出してきた。会期中、無料イベントを含めて160ものプログラムが提供される。商店街の協力も得て、まさに上野全体を使ったスケールの大きな音楽祭だ。

 鈴木さんが音楽祭を始めた動機は、「東京に住む人、東京で活動している企業が、公的資金によるのではなく自らのお金を持ち寄って、日本のお祭りの神酒所(みきしょ)に『酒一升』の札を掲げるような音楽祭を作りたかったから」。会社の〝本業〟とはまったく違う分野で、街の文化的発展に尽くすその姿を秋号でぜひお読みください。連載第2回、冬号では、世界遺産に登録された石見(いわみ)銀山の町、島根県大田(おおだ)市大森町の復興に尽くす中村ブレイス・中村俊郎社長をレポートします。こちらもどうぞお楽しみに。

撮影・菅野健児