出版不況、活字文化の衰退……言い飽きるほど言い、聞き飽きるほど聞くうち、危機感を覚える感覚まで鈍るような気がするなか、嘆いたり愚痴ったりするのではなく、敢然と前を向いて、「ことばを届ける仕事」に邁進する人々がいます。全国各地に、高い志を掲げる書店や出版社がありますが、冬号では、その中からとりわけ編集部が「この人に会いたい」と強く願ったお三方にご登場いただきました。

 最初は、鎌倉の出版社「港の人」の上野勇治さん。「いま、生きる、ことの〝切実〟を問う出版社であることを願っています」とホームページに掲げる会社をほぼ一人で経営しています。高校時代、宮沢賢治の「告別」という詩に励まされたという上野さんは、「詩は文学の極北に位置する存在」であるとして、詩と学術書の刊行を事業の中心に据えました。「詩は魂を直接表現するもの」と語る上野さんが、詩を通じて社会に働きかけていることとは何なのか、ぜひ誌面でご覧ください。

演劇や印刷会社勤務などを経て、この仕事にたどり着いた上野さん。そのことばは、とことん熱い。

 次は、和歌山県日高郡日高川町、JRの駅から車で一時間ほど内陸に入ったところにある住人100人ほどの小さな村で本屋「イハラ・ハートショップ」を営む井原万見子さん。長距離走をする中学生の後ろをサルが追いかけていたとか、犬を連れて散歩かと思ったら足元にいたのは狸だったとか、民話も顔負けの日常がある山の中で、都会のこだわり書店に負けない品揃えの書棚を維持できるのはなぜなのか。商圏が小さいからこそ、お客さんの顔が見えるからこその、井原さんの選書の秘訣が明かされます。

生まれ育った町から本屋の灯を消したくないと語る井原さん。

 最後は、筋ジストロフィーの詩人・岩崎航さんの『点滴ポール~生き抜くという旗印』や老人介護施設「よりあい」の日々を描いた『へろへろ』(鹿子裕文・著)など、話題作を次々と刊行するナナロク社の村井光男さん。就職・退職・独立・復職・倒産を経て、2008年に同僚と二人でナナロク社を立ち上げた村井さん。「本屋に行くと、世の中いい本がたくさんある中で、自分が本を出す意味があるのかと考えると辛い」と語る一方で、それでも本を作ることに焦がれるような情熱を燃やす理由を、口から炎が出るかと思うほどの勢いで語ってくれました。

オフィスの奥には書庫。これまでに作った本の数々を前に、村井さんは活字と生きる決意を語った。


 言葉や書物に対する向き合い方は三者三様ながら、活字文化の灯を消してはならないという強い思いは共通しています。『考える人』は、こうした方々と手を携えて、さらに力強く進んでいきたいと思います。そうした思いも汲み取っていただけると幸いです。

(撮影・菅野健児、考える人編集室)