英国のオックスフォード英語辞典が、2016年を象徴する「今年の言葉(ワード・オブ・ザ・イヤー)」を発表しました。選ばれたのは「post-truth(ポスト真実)」でした。英国のEU離脱問題をめぐる国民投票、米大統領選でのドナルド・トランプ氏の勝利などの報道や論評の中で、この言葉の使用頻度が急増したのだといいます。客観的事実や真実を伝える言葉より、人々の不満や怒りといった感情に訴える言葉(根拠のないウソや捏造情報であっても)のほうが世論形成に大きな影響力を与えたというのです。
 では、言葉は力を失ったのか? もはや頼むに足りないのか? といえば、そうではないでしょう。空転する言葉によってもたらされた混乱は、やがて言葉自身がその不均衡を正し、新たな現実、真実に寄り添う表現への道すじを用意するはずです。混迷の2017年に向けて「ことばの危機、ことばの未来」を特集した所以です。(編集長・河野通和)

(「波」2017年1月号掲載)