工場をイラストで表すときによく使われるのが、「のこぎり屋根」の工場です。北側の窓からの光は影を作らず、糸や織地、模様や色がよく見えるため、織物工場などでよく使われた形なのだそうです。明治時代に東京下町に建てられた「のこぎり屋根」の工場のひとつが、奇跡的に最近まで残っていましたが、残念なことに2013年、マンション用地として土地が売却されるのに伴って工場は解体されてしまいました。

 そこから「発掘」されたのが、明治27年に創立され、日本初の国産リボンを生産した岩橋リボン製織を引き継いだ「千代田リボン製織」社長、渡辺四郎が欧米で集めてきた華麗なリボンと初の国産リボンの見本の数々。見本帳に丁寧に貼り付けられたリボンは、当時の欧米文化への強いあこがれを感じさせ、いまも独特の輝きを誇っています。「リボン」といっても、髪に結ぶような単純なものだけでなく、絵画のように複雑に織り上げられたものや、国王や大統領の就任を祝ったとおぼしきタペストリーのようなものなど、「リボン」の概念を覆すような芸術性の高いものが数多く含まれています。

 冬号では、この見本帳を譲り受けた「谷中のこ屋根会」の山﨑範子さんに美しいリボンの数々を見せていただき、地域の歴史に詳しい作家の森まゆみさんに解説を書いていただきました。リボンを集めていた、大地主の実業家・九代目渡辺治右衛門の四男、渡辺四郎とはいかなる人物だったのか。森さんが詳しく書いてくださっています。

 
 
以上すべて撮影・菅野健児

 美しい写真とともに、文明開化のリボンの物語を冬号でお楽しみください。