2011年3月、岩手県陸前高田市。瓦礫と泥に覆われた大地にも、新たな命が芽吹こうとしていた。


 3月がもうすぐ、終わろうとしている。11日は6年前、東日本大震災が起きた日。同じ日、取材でお世話になった方のお子さんが、保育所で亡くなったことを昨年知った。12日、父の誕生日であり、兄の命日。この月になるといつも、心がどこかざわついたままだ。
 それでも少しずつ、頬をかすめる風が温かさを帯び、裸の木々の枝先に新しい命の気配が宿る。あらゆる生き物たちが、次の季節を迎えようと深呼吸しているかのようだ。3月を覆うのは喪失だけではないのだと、優しく語りかけてくる。下を向くにはあまりに勿体ない季節だ、といつもの道を歩きながら朗らかな気持ちをもらう。
 30日、この世に生を受けてから30年となる。今を生きる人には、まだ解かなければならない宿題が託されているの、とある人が教えてくれたことがある。先に学びきってしまった父や兄、大切な人たちの声を心に響かせながら。明日からまた背筋を伸ばして、その宿題に取り組もうと思う。

陸前高田市街地、義理の父母が暮らした官舎跡地。今はこの場所も分厚い土の下に埋まろうとしている。