桜に感謝。君のおかげで皆、上を向いて歩ける。


 いつもの駅で電車に乗り込み、無意識にスマホを取り出す。しばらくしてふと顔を上げる。車窓の向こう側、線路際に咲いている黄色い花たちが一瞬目に入ったかと思うと、あっという間に視界の彼方に消えていった。きっと一番大好きな菜の花だったはずだ。こうして知らず知らずのうちに、愛おしい瞬間は流れ去っていく。スマホに目を落としている時間は、何かを知りたいと望んでいるというよりも、世界を拒絶することなのかもしれない。

 そう考えると日々の中でシャッターを切るということは、美しいものを切り取るというよりも、日常の中で見落としているものを拾い上げるような作業のように思える。

 毎日がつまらない、と語る友人たちに、時折こんな言葉をかけることがある。カメラを持って、街に出よう。何か撮るものがないものかと探しているうちに、気が付く。普段何気なく通り過ぎている風景、その一つ一つが、実は自分に笑いかけていたことに。だから春を見つけに行こう、と。

4月。あらゆる生き物たちが、新しい季節に向かって背伸びする。