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こんにちは。「Webでも考える人」新編集長の松村正樹です。
8日(月)から津野海太郎さんの新連載「最後の読書」を配信しています。
齢80を過ぎたとき、人はどのように本を読むのか、どのような本が面白くなってくるか、ということを、「考える人」でかつて『花森安治伝』の連載をされた津野さんが綴ります。
津野さんは、来年4月に80歳を迎えます。
筋金入りの読書家の津野さんが、70歳〜70代半ばまでの日々をつづった『百歳までの読書術』は、2015年夏に刊行され話題になりました。この連載はいわばその続編。80歳近くになった著者のウェブによるリアルタイムの読書エッセイ連載です。「本とコンピュータ」総合編集長でもあった津野さんが「Webでも考える人」に満を持しての登場です。
連載は毎月一回、来月以降は基本的に5日(5日が土日の場合は月曜日)に配信予定。

さらに本日11日(木)、飯間浩明さんの「分け入っても分け入っても日本語」を配信いたします。「ゲスい」「むちゃくちゃ」「虫が好かない」「白羽の矢が立つ」など気になる言葉の由来を「三省堂国語辞典」の編纂者が解き明かします。
飯間さんは新潮文庫から出ている『三省堂国語辞典のひみつ』の著者。ウェブサイト「ROLA」からのお引越し連載として、今までのバックナンバー全28回も移行しますので、あわせてお楽しみください。一回完結の、日常生活を豊かにするコラムです。週一回、木曜日更新の予定。

以下、先週ゴールデンウイークの編集長日記です。文芸誌「新潮」と兼務で、「Webでも考える人」編集長をしています。

5月1日(月)
Webでも考える人」が新体制になって一ヶ月。ウェブマガジンに関わってきた人には当たり前なのだろうが、今、この世界が面白くて仕方がない。
コンテンツをすぐ載せられるし、どのくらいの方に読んでもらえているかが即座にわかる。
コンテンツを配信する日時が指定できる。
文字数をレイアウトに合わせて削ってもらう必要がなく、写真や画像が載せやすい。
リンクを貼れるのを武器にできる。
17年間も文芸誌にいたので、いかに自分が無意識のルールに縛られて発想していたのか気づく。もっともっと面白いことが出来ないか、あの作家だったら面白がってこの企画を引き受けてくれるかな、と気が付くと考えている(「新潮」の矢野優編集長、そちらの仕事もちゃんとやってますので、ご心配なく!)

5月3日(水)
HDDに貯めていたバカリズム原作・脚本・主演の深夜ドラマ「架空OL日記」を三話まとめて見る。バカリズムが夏帆や臼田あさ美ら女優に混じって銀行につとめるOLの日常を演じる30分のシチュエーション・コメディで、なかなか面白い。
原作はバカリズムがOLになりすまして書いていたブログで、小学館文庫に入っている
前クールのバカリズム原案・共同脚本の「住住」も、バカリズムとオードリー若林と二階堂ふみが本人役を演じる抑制されたコメディで良かった。
「素敵な選TAXI」から3年、昨年は役者としてかかわった「ウレロ☆無限大少女」からはじまって、「黒い十人の女」や「かもしれない女優たち2016」があった。バカリズムは、一体、この一年強でどれだけのドラマにかかわっているのか、と恐ろしく思う。いずれも明確な新しい実験がある。特に、「なりきる」ことが笑いをよぶ「住住」と「架空OL日記」は、肩の力が抜けていて、才気を感じる。今、知らず知らずのうちに日本のコメディの文脈の変わり目に立ち会っているのではないだろうか。

5月5日(金)
最近読んだ本。
上間陽子さんの『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』。岸政彦さんの『街の人生』『断片的なものの社会学』にも似たオーラル・ヒストリーの試み。日常的に暴力を受け、風俗や援助交際をしている沖縄の女性への聞き取りなのだが、話にわかりやすいストーリーラインをあえて作らない。
岸政彦さんが帯に寄せているように、「診断しない。ただ話を聞く」。結果的にそのスタンスこそが彼女たちにカウンセリングの効果をもたらすことがよくわかる。
桐野夏生さんの『夜の谷を行く』。連合赤軍事件で服役し、静かに暮らしている女性が、過去と向き合うことを迫られる小説。あまりに事件そのものが強烈すぎるせいか、連合赤軍とフィクションとの相性はいいとはいえないと思っていたのだが、『グロテスク』の著者である桐野さんはやはりさすがである。なるほどここに虚構化への隙間があるのか、と読後に気づく。また、2年前に新潮社から刊行された『抱く女』と合わせ鏡になっているように思う。

5月5日(金)
横浜の実家に寄ったあとは、百貨店で中華街・華正樓の焼売や餃子を自宅のお土産に持って帰る。手作り感があって、どちらもおいしいのだが、中に但し書きがついている。
「焼売の美味しい召し上がり方……電子レンジの使用は大変風味をそこないます」
絶対に蒸すように書いてあって、電子レンジで楽をしようとする客に厳しい。読むたびにこの文章、「大変」の二文字は別にいらないんじゃないかと思うのだが……。


松村正樹

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5/8(月)に連載が始まったばかりですが、いきなりの1位! 筋金入りの読書家・津野海太郎さんが読む、鶴見俊輔『もうろく帖』。

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日本ではなかなか名前を聞く機会も少ないソマリ世界ですが、古今東西の文献にはソマリの描写が残されています。ランボー in ソマリとは!?

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