あなたは見た夢を覚えていますか?
「夢は見ない」「断片的に、日常生活の延長みたいな夢しか見ない」という人もけっこう多いようです。
恩田陸さんは作家になって以来、見る夢が鮮明かつ複雑になり、「もう一度見たい」と思うこともしばしば。あまりにも奇怪な夢を見るので、夢日記をつけることが日課になったのだとか。
夢を可視化できる世界を描いた『夢違』、眠りの中で常人とちがう能力をつむぐ人々の物語『光の帝国 常野物語』などの作品をもつ恩田さんは、いわば“夢の見巧者”なのです。
今回、「眠りと夢」特集では、その中からとっておきの夢をご紹介いただきました。たとえば……

〈若い女性二人が話している。路上というか、がらんとした淋しい田舎道だ。その会話が聞こえてくる。
「同窓会の通知来た?」
「二歳下の妹には来たんだけどね」
「ええっ、そうなの」
 会話をしていた片方がものすごく驚き、顔色が変わっている。どうやら、その返事のせいで何か重要なことを悟ったらしい。〉

本格推理ファンである恩田さんならではの、このまま小説の導入となりそうな、意味ありげな夢。じっさい、恩田さんはこの会話にあるらしい重要な意味を考え、発展させて「思い違い」(小社刊『私と踊って』に収録)という短編を書きました。
このほか、やけに具体的で詳しいプロット系の夢、最新型ブルーレイ並みに鮮やかで、ティム・バートンかピーター・ジャクソンの映画のように美しいビジュアル系の夢。その両方がミックスされたうえに三部構成になっている大作(!)まで。こんな夢をいつも見ているとしたら、そうとうおつかれではと同情してしまうほどです。

 2011年、カリフォルニアの大学で、夢のイメージを再現する初期の実験に成功したというニュースを聞いた時には本当にびっくりした。近い将来「夢札」が発明された暁には、ぜひ私の見ている夢を興味のある方にのみ、こっそりお見せしようと決めている。

 他人の夢の話は、いまひとつ面白さがつたわらないことも多いものだけれど、恩田さんの「夢札」は必見でしょう。実現が待たれます。