人生の三分の一を占める、どんな人にとっても身近で、同時に不可思議でならない体験「眠り」と「夢」について、科学者、批評家、美術史家、建築家ほかの方々が、テーマごとに深めてくださいました。

池谷裕二「脳は眠らない?」
薬学の分野から脳を研究している池谷さんが、そもそも私たちが眠っているとき、脳はなにをしているか、夢とはなにかを解説します。「学問や芸術に不可欠なひらめきは、睡眠という生理現象から生み出されていると思う」「夢をなぜ見るのかがわからない。夢を解明していくと、脳と生命のことがわかっていくのです」――
人体の絶妙なメカニズムと、研究者の探求心に感嘆させられます。

内田樹「村上春樹の眠り」
自他ともにみとめるハルキストの内田さんが、村上作品を生み出すことに一役買っている(かもしれない)もうひとつの視点、無意識のなかのもうひとりの自分=「アルターエゴ」について、物語から読み解きます。眠りとも関係の深い、その分身とは? 刺激的なその分析は、ぜひ本誌でおたしかめください。

酒井順子「目が覚めているのが奇跡」
寝起きのよくない酒井さん。起きている間中眠くてたまらないという、その眠気との戦いには涙ぐましさすらあります。「私の人生のベースは睡眠にあって、起きている方が珍しいのだ」と断じる酒井さんが、いま楽しみにしていることとは。……ロングスリーパーの方々の共感を呼ぶ境地かもしれません。

岡田温司「夢の中の目」
美術史家で批評家の岡田さんが、夢に内在する意味を象徴する「夢の中の目」をモチーフにした作家たちを紹介します。なかでも、挿画にもなっているフランスの風刺画家グランヴィルの作品「罪と罰」は、悪夢そのもの。そのほかマン・レイ、バタイユ、ブニュエル、フロイトなど、芸術や学芸のさまざまなジャンルで、人々が夢の強迫観念的な部分に強く惹きつけられてきたことが解き明かされます。

青木淳「どこもが『寝室』になる。」
建築家の青木さんが、はじめて手がけた住宅には「寝室」がなかった。それはなぜ? 「生活が未分化のままに維持された家の方が人間にとって快適なのではないか」――建築と人間との関係を、独特の視点から問いつづけてきた建築家の、原点ともなった「寝室論」です。

小山恵美「それぞれの『良い睡眠』」
光環境の研究から睡眠環境学を追究する、工学博士の小山さん。いま世の中にあふれている快眠グッズや快眠のハウツーを一刀両断、「『良い眠り』のありかたが、個体差の大きいもの」であり、その人にとって適切な眠りのサイクル、時間帯は自分自身で見つけるべき、と提唱しています。

粂和彦「夢の中で勉強する」
ショウジョウバエを使ったユニークな睡眠研究をしている、分子生物学者の粂さん。睡眠中の脳内のドーパミン回路を調べて、「目を覚まさせないで、学習できる」ことを発見しました。「睡眠学習」が実用化したら、それは人類にとって福音なのか、はたまた……? 

それぞれに興味のつきない、眠りと夢を考察した多彩なエッセイです。ぜひ本誌でおたしかめください。