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今週は盛りだくさんです。

作家の五木寛之氏、学者の中島岳志氏、親鸞に関心のある二人の初対談「親鸞思想の危うさをめぐって」を配信しました。「考える人」で連載し、長らく改稿を重ねていた『親鸞と日本主義』が8月25日に発売されますが、この<問題作>をめぐって43歳差の二人が強度のある対話をおこないました。

八紘一宇という概念を作った田中智学の国柱会がある、日蓮宗とファシズムの関係はよく知られてますが、親鸞の思想はそれとは距離があると見られてきました。一見、ファシズムとはほど遠そうな絶対他力や自然法爾の思想が、天皇中心の国体を正当化する論理として、国粋主義者の拠り所となったのは何故なのか。五木氏が様々な角度から中島氏に問いをぶつける、知的刺激にあふれた対談です。ぜひご一読ください。

さらに、若松英輔さんの『岡倉天心 日本近代絵画を創った描かぬ巨匠』。雑誌「考える人」2016年秋号、第8回「呼びかける東洋」で一応の完結をみた好評連載がかえってきました。「考える人」の若松さんの連載は、

「「岡倉先生は、いわゆる筆を持たない芸術家でありました」(『大観画談』)と大観が語っているように天心はそうした語らざる思想家であり、また、描くことのない、しかし、真の芸術家の一人だったのである。」

で終わりました。この続きから、「Webでも考える人」で連載がはじまります。続篇第一回「美の国、美のちから(一)」を配信いたしました。

「アジアは一つ」の言葉、あるいは茶道を通して日本文化を世界に知らしめた思想家であり、二十世紀において世界的にも最たる芸術「近代日本画」を創りあげた画家と言われながら、ほとんど絵画作品がない天心。そんな彼に、横山大観、下村観山、菱田春草、橋本雅邦らの弟子が惹きつけられ、その精神が後代の奥村土牛や東山魁夷などにも脈々と継がれていったのはなぜか……? 

近代以前の日本画の枠組みを全て取り払い、今一度、地に足をつけた古来の日本精神、アジアのアイデンティティの境地を模索し、描き出そうと挑む、その境地のことを岡倉天心は「霊域」と呼びました。若松さんのこの連載は、いわば岡倉天心の「霊性」についての一代記であり、その三冊の著作を丁寧にひもときます。 過去の連載も同時に配信しております。あらためてこの野心作にご注目ください。

それから、もうひとつ、8月7日から隔週更新予定で、イラストレーター大高郁子さんの「考える猫のその日暮らし」というイラストページをはじめました。好奇心いっぱいの子猫の成長日記です。お楽しみに。


8月14日(月)
亀田俊和さんの『観応の擾乱』を読む。室町幕府を二つに裂いた1350年から52年にかけての足利尊氏と直義の兄弟の戦いを描く。名前だけは知っていたが、知れば知るほどこの内乱も複雑である。まったくの偶然なのだろうが、同じ中公新書で出されたこともあって、ベストセラーになった『応仁の乱』の前日譚の趣きがある。

応仁の乱に比べたら、観応の擾乱はわかりやすいかと思ったが、そうでもない。こちらもよくわからない。戦争というものの、次第にはじめた人間の思惑から離れ、ある者の欲望が他者に移り、誰一人として状況を操れなくなる感じ、それこそがこの手の本の面白さだと思う。結果として、擾乱のあと、努力が報われる政治が実現し、鎌倉幕府の模倣ではない、室町幕府独自の権力構造が生み出されたという。

8月15日(火)
ひどい雨の中、新潮社OB二人と、練馬区の故三浦哲郎さんの自宅へ。久しぶりに奥様にご挨拶する。お元気でほっとする。

井上ひさしさんと三浦哲郎さんは若い時から長らくお世話になった小説家だった。そのお二人が同じ2010年、4ヶ月ぐらいの間につぎつぎと亡くなった。大きな作家がなくなると、その作家を形作っていた言葉や空気がすべて失われる。

お二人とも東北出身だったので、2011年の東日本大震災を知らなくてよかったのかもしれないという気持ちと、いや、そんなことはない、それを見て、さらにその6年後の今の日本を見てなんと言うかを知りたいという気持ちが交互にやってくる。ときどき、夜中、寝るときに、お二人の個性的な語り口が聞こえる気がする。

8月16日(水)
星野源さんのシングル「Family Song」の発売日。公式サイトにある音楽ジャーナリスト・高橋芳郎さんの解説が充実している。その中にあった星野源さんの発言。

「今回はずっとやりたかったことが実現できて〈やったぜ!〉って感じなんですけど、実はシンバルを一切入れなかったんですよ。打ち込みでシンバルが入っていない曲、たとえばテクノやエレクトロなんかではそういう曲もたくさんあるんですけど、生演奏の日本の音楽でクラッシュシンバル、ライドシンバルが入ってない曲はほとんどないと思います。特にJ-POPでは。
でも、海外のR&Bやソウルミュージックでは普通にたくさんあって。それはなぜなのか、なぜ日本人はシンバルを叩くのか、というのはずっと考えていたんです。今回古いソウルミュージックのニュアンスを追求するうえで大事な部分、鍵になっている部分はまさにそのシンバルを入れないというところで、あのなかにシンバルを入れると途端にJ-POPになるんです。だから〈古いソウルミュージックのニュアンスを追求すること〉と〈シンバルの入っていない曲をつくること〉という自分がやってみたかったことが見事に合致して、やってみたらいきなりあの雰囲気に近づいたところがあって。ただ、シンバルを入れないだけでめちゃくちゃ不安になるんですよ。そこでシンバルがないのを寂しくないようにするにはどうすればいいのか、いろいろ試しながらつくっていきました」

演技も文章もラジオも面白いけど、星野源さんが信頼できるのってこういうところだと思う。ソウルミュージックをただ好きで再現するのではなく、日本の今のどういう文脈に置いたら面白いかに常に自覚的でいるところ。一曲の中に問いかけと回答があるところ。次はどういう手でくるのか、星野源さんの歩みを同時代で体感できるのはわくわくする。

確かにミュージックビデオの後半に出てくるドラムには、もともとシンバルがない。改めて聴くと、ハイハットとスネアドラムを刻む音がより耳に入ってくる。

8月17日(木)
第16回小林秀雄賞選考会の日(発表は翌日。Webでも考える人でも発表しました)。同じ私鉄沿線に住む加藤典洋さんの自宅にお迎えに行き、都内のホテルへ。養老孟司さん、橋本治さん、関川夏央さん、堀江敏幸さん、続々と選考委員が集まる。もう16年、この賞の選考会に出ているが、選考委員同士の距離感が絶妙で、議論も冷静で深みがあり、毎年、2時間半あまりの議論が知的刺激に満ちていて楽しくてならない。16年間、選考委員が亡くなられた河合隼雄さん一人しか代わってないのも珍しい。

座長が昨年までの河野さんから、中島さん(新潮選書編集長)と代わり、発表媒体は雑誌「考える人」から「新潮」へ。すぐ「新潮」10月号に選評や受賞作品の抄録を掲載することになっているので、私も例年より緊張感を持って臨む。

第16回小林秀雄賞は國分功一郎さんの『中動態の世界 意志と責任の考古学』(医学書院)、ドキュメント賞はブレイディみかこさんの『子どもたちの階級闘争——ブロークン・ブリテンの無料託児所から」(みすず書房)。偶然、共著のあるお二人になった。
 
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