春号から、サイエンスの2つの連載が始まりました。永田和宏氏「生命の内と外 ホメオスタシスの謎」と、大河内直彦氏「新地球紀行」です。フィールドの異なるサイエンティストではありますが、「読者を楽しませてくれる」文章には定評があるお二人です。

 まず、永田和宏氏の連載。「ホメオスタシス」とは「恒常性」という意味で、ひらたくいえば外部の環境が変化しても、生体の内部の状態を一定に保つ性質のこと。たとえば猛暑や厳寒の状態にいても、人間の身体はさまざまな工夫をして体温を一定に保とうと努力します。そうした工夫をするのに欠かせないものが「膜」です。必要なものを取り入れ、不必要なものを排出する。バクテリアから酵母、植物、動物細胞まで、すべての細胞はこの「閉じつつ開く」という「膜」の役割を持っています。連載では、この「膜」を通して生命の謎に迫ります。
 ちなみに、永田氏は戦後日本を代表する歌人でもあり、多くの歌集も刊行しています。昨年、新潮社から刊行された『歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子 闘病の十年―』はNHKでドラマにもなり話題を呼びました。

 大河内直彦氏は、有人潜水調査船「しんかい」で有名な海洋研究開発機構の研究者です。専門は生物地球化学・古気候学・同位体地球化学・地球環境科学――こうして専門を並べてみると、ひどく難解な文章を想像してしまいますが、大河内氏の読み物は、歴史や文学などの知見もおりまぜられており、実に楽しく頁をめくることができます。デビュー作の『チェンジング・ブルー―気候変動の謎に迫る―』(岩波書店)では、気候変動という難解なテーマにもかかわらず、いきなり講談社科学出版賞を受賞しました。
 今回の連載は、地球がどのように生まれ、移り変わってきたかがテーマです。大気や海、大陸の変化、そして生命の誕生と生物の進化をおりまぜ、まるで映画を観ているかのように映像が思い浮かぶ、地球46億年の移り変わりを表現してくれます。