夜明けと共に、海の呼吸がこだまする。宮崎県、島野浦の日の出。
 

 突然、兄が夢に現れた。彼が亡くなってからの15年間で、初めてのことだった。それも命日でも、誕生日でもない日に。最初は電話で言葉を交わす場面で始まった。兄の声は、最後に話したときのようにどこかふわふわとしていた。次の場面で、今度は一緒に朝食を食べていた。どこかのカフェで迎えた、爽やかな朝だった。「現実伝えるって難しいよね」。兄がふと放ったその言葉に戸惑いながら、その夢は醒めた。悲しくはなかった。ただ兄に、ありがとうと伝えたかった。
 9月という月。1日には子どもたちの自殺が増えてしまうと大きく報道された。10日は世界自殺予防の日だった。11日には同時多発テロから16年、そして東日本大震災から6年半という日を迎えた。命とは何か、と再び心の中で問いかけ続けた。
 兄が現れた夢の話をすると、ある人がこんな言葉をくれた。「生きているのに、一生、話をしない知り合いもいる。この世にはいないのに、確かに話をする人がいる」。人の縁とは、何だろう。その答えを探る旅は続く。

岩手、小岩井の森。虫、鳥、葉のささやきが静かに辺りを包み込む。