特集では、独立研究者の森田真生さんに「数学と情緒」というテーマでご執筆いただきました。「数学の中心にあるのは情緒である」と美しく語った大数学者、岡潔(1901~1978)の言葉をたよりに数学を語る、という高き山に挑戦されています。

この文章を読み、「岡潔の生命感が息吹となって数学に吹き込まれ、花開いたのが情緒なのですね」と、感想をくださった方もいました。「数学は美しいか」という、特集のタイトルともなった大きな問いに対するこたえのひとつが、ここにあるのかもしれません。

さて、岡潔の言葉に惹かれた同時代人に、前号で特集をした小林秀雄(1902~1983)がいます。小林の声がけで、夏の暑い京都で、対談が行われました。昭和40年のことです。

冒頭はこんな風です。

小林 今日は大文字の山焼きがある日だそうですね。ここの家からも見えると言ってました。
 私はああいう人為的なものには、あまり興味がありません。小林さん、山はやっぱり焼かないほうがいいですよ。

なんとのっけからこの調子です。この会話はどこに帰着するのか、しないのか? 
「史上もっとも知的な対談」といわれるこの対談は、雑誌掲載後、『人間の建設』という本にまとまり、新潮文庫に収録されていまだに読まれるロングセラーとなっています。興奮は時代を越えて伝わるのです。『考える人』が今後考えていきたいヒントがちりばめられているこの一冊も、あわせて読まれることをお勧めします。

それぞれの内容は実際に味わっていただくとして、雑誌の発売後、森田さんの文章には大きな反響がありました。その声をありがたく受け止め、『新潮』(8月7日発売・9月号)でこの続きをご執筆いただくことになっています。
タイトルは、「数学する身体」――いったいどういうことかと思われるかもしれません。新しい身体感覚を、数学に私たちは見出すことができるのでしょうか? それとも数学が教えてくれるものなのでしょうか? 

想像が膨らんできたのではないでしょうか。
どうぞご期待ください。