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2週連続第1位!読まずにはいられなくなる書評です!絶賛ツアー中のGRAPEVINE、ライブも楽曲も要チェック!
タレントの小島慶子さんがツイッターで「私もずっとモヤモヤしていたので飯間さんに感謝。」とコメントしてくださったのを機に再浮上!
國分功一郎さんの小林秀雄賞受賞インタビュー! 本を書くに至る動機から、出した後の反響、小林秀雄についてなどかなり率直に語って頂きました。
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10月2日(月)
大鹿靖明さんの『東芝の悲劇』を読む。

東芝の昨今については文春オンラインで書いている大西康之さんの『東芝 原子力敗戦』も目を通した。大西さんの本が、おそらく内部資料を大量に入手し、いかに国策=政治にひっぱられ、企業幹部の自己判断が効かなくなっていったか、に焦点をあてているのに対し、大鹿さんの本は1990年代後半から2010年代後半の20年間、歴代トップ5人がどのように会社をダメにしてきたかを丁寧に書く。

普通この手の話は、カリスマのあと、個性のない決断力のない社長が続いて会社がダメになっていくというようなストーリーが多いが、この本に出て来る東芝の社長の系譜はそうではない。穏やかな紳士による経営が長く続いていた東芝は、バブル崩壊後、思い切った刷新を託されて傍流からトップ西室が起用された。やがて、西室が院政をしきやすいよう傍流からまたもやトップを選び、そういうことが続いているうちに、会社はものいえぬ社風となり、粉飾決算の温床が出来上がる。粉飾の手口を活用し、恐怖政治をしいたのが佐々木で、原発に命をかけてきた彼は、東日本大震災以降も、無謀にも原発に邁進し傷口を広げていく。

東芝は、技術革新についていけなくなったわけでも、競争に負けたわけでもない。それなのにこうなった。かくも「企業」というものは脆いものなのか、と足許をおぼつかなく感じさせる本であった。

10月3日(火)
久々に辻原登さんと食事をする。素敵なドイツ家庭料理とドイツワインの店に連れて行ってもらった。辻原さんは大人のおいしい店にほんとうに詳しく、話題も多岐にわたる。あっという間に時間が流れていた。考えてみると、自分は大人の紳士の社交というものを、30代以降、ずっと辻原さんに教わってきた。

昨年まで、「新潮」には長篇小説『籠の鸚鵡』を連載、また10月号には「Delusion」というかなり凝った短篇小説を書いていただいた。「中央公論」に連載中の谷崎潤一郎を意識した長篇小説「卍どもえ」の話もする。男3人、女2人の性愛をめぐる物語。当然のながら、カップリングは異性愛だけではない。

10月4日(水)
「講談社は3日、老舗の小説誌「小説現代」の内容を刷新するため、2018年10月号をもって約1年半休刊し、20年3月号でリニューアル創刊すると発表した。」(読売新聞)というニュースを知る。約1年後の休刊のニュースがもう発表されるのも異例だし、リニューアル期間が1年半というのもあまり聞いたことがない。

「長篇の連載を中心とした伝統的な小説誌のスタイルを見直し、長篇一挙掲載を中心とした雑誌にするという」。「新潮」や「群像」など文芸誌では「長篇一挙掲載」+「連載小説」が雑誌の柱になっているが、「小説新潮」や「小説現代」といった中間小説誌(エンターテインメント小説誌)だと、なかなか人気作家の一挙掲載は難しいのだろうな、と思っていた。準備期間があれば、最初の1年ぐらいはまわっていくだろうが、そのあと続けていくのは現場は大変だろうなあ。

神楽坂 la kagu にて、今年の第16回小林秀雄賞第16回新潮ドキュメント賞の受賞者、『中動態の世界』の國分功一郎さんと『子どもたちの階級闘争』のブレイディみかこさんの対談「不敵な薔薇を咲かせるために」。ブレイディみかこさんという、このパワフルな新しい書き手はどういう人なのか、楽しみにしていた。90名の会場も、すぐにチケットが売り切れてしまって満席。

二人は、國分さんがイギリスにいた数年前からつきあいがあり、猪熊弘子さんを交えた三名での『保育園を呼ぶ声が聞こえる』という共著もある。「不敵な薔薇を咲かせるために」のタイトルに合わせ、社内の有志でカンパしあって、会場に薔薇の花束を用意した。話はどうしても昨今の日本の政治へ。「日本は短期的に砂のように流れているのが心配。日本人はもっとスティッキーに、ねばねばになって、忘れないことが大切だ」という話が印象に残った。

この対談は、後日、当サイトに掲載する予定です。

10月5日(木)
ノーベル文学賞がカズオ・イシグロに! 作品が訳されるたびに、同時代的に読んできた外国人作家のひとりだ。好きなのは、『わたしを離さないで』と『日の名残り』(まったく面白みのない凡庸な選択ですいません)。

デビュー作の『遠い山なみの光』から、この独特な淋しい感じ、精緻に組み立てられた主人公の置かれた状況がいつか儚く零れ落ちそうな危うい感じにずっと惹かれてきた。人間の記憶がいかに不確かで、過去をねつ造するかが描かれていると思う。カズオ・イシグロの小説は、読書でしか味わえない人生の喪失感を感じさせる。

10月6日(金)
都内のホテルにて第16回小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞の授賞式。あらためて、國分功一郎さんとブレイディみかこさんをみんなで祝福する。

今年から新潮ドキュメント賞の選考委員になった池上彰さんにはじめてご挨拶してどきどきした。面識があるように感じていたが、一方的にテレビを私が見ているだけだった。小林賞選考委員・加藤典洋さん、國分功一郎さん、新潮ドキュメント賞選考委員・梯久美子さん、ブレイディみかこさんと、あいさつがみんな素晴らしかった。

加藤さん、共同通信に求められ、カズオ・イシグロについての原稿を午前3時まで書いていたという。しかも、パソコンの調子が悪く、数年ぶりに手書きで書いたのだとか。
 
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