数学の美しさは、まず美しいと思う人に尋ねよう、ということで、グラフに池田亮司さんのインスタレーション、杉本博司さんの写真、東大折紙サークルOristの作品「らせん」、江戸時代の「算額」など、数学でありアートである作品を掲げました。さまざまに美しいこれらの作品には、「見るものの裡に何かを呼び起こす」という共通点があると思います。

「私が世界で一番美しいと思う数式・証明」

偏愛する数式の美について、映画の監督コメンタリーのように語ってもらったら面白い、という山本貴光さんのアイデアで実現しました。
角大輝(大阪大学大学院准教授)、加藤文元(熊本大学大学院教授)、志村史夫(静岡理工科大学教授)、野崎昭弘(数学者)、竹内薫(サイエンス作家)、三宅陽一郎(ゲーム開発者)、円城塔(作家)という7人の碩学にご登場いただきました。簡潔さが示唆する広大な世界、宇宙を語る哲学、悪魔的なものまで、わずか200字前後のコメントながら、その美しさが伝わってくるはずです。

ルポルタージュ

深川英俊「算額の愉しみ」。小説『天地明察』( 冲方丁著)で知られるようになった算額ですが、全国に遺るそれを研究し本にまとめた人がいます。深川さんが算額に魅了されていったきっかけや、とっておきの「傑作・名品」などをうかがいながら、各地の算額を訪ねます。
Orist「肉体化する数学」。数学的な見地から理論化された高度な立体折紙、通称「スーパーコンプレックス折紙」の普及に貢献している東大折紙サークルOristの探訪記。1枚の紙からありえないほど複雑な立体を創造する、スリリングな体験をどうぞご一緒に。

エッセイ

すでにご紹介した森田真生「数学と情緒」のほかにも、贅沢なラインナップで、さまざまな数学の魅力を探索しています。
竹内薫「超難問と天才数学者の世界を探検する」では、ポアンカレ予想とペレルマンを筆頭に「超難問」の一級品を紹介。数式を出さずに超難問を解説するという竹内さんの気遣い(文系読者への)に感服しました。
長岡亮介「東大の数学入試問題は美しい」は、数学者特有の「美」意識の意味と、それを具現した入試問題を示してくれます。長岡さんの感動のツボを押さえたみごとな講義ぶりを、ぜひご体験ください。
中島さち子「スウィングと数学の絶妙な関係」。ジャズピアニストで数学者という中島さんの、身体感覚から語られる音楽と数学の関係は、このうえなくおもしろく神秘的。中世音楽とモーツァルトの音階、ジャズのリズムを聞くとき、この文章を必ず思い出すことでしょう。
鏡リュウジ「隠された世界を知るために」。占星術の基本には比例とユークリッド幾何学があったとのこと。現実世界のなかに「合理」と「調和」という見えない真実を追い求める占星術は、こんなにも数学である、という数学ぎらいの鏡さんの主張が胸熱く迫ってきます。
野崎昭弘「『天国への道』パズル」は、多値論理学がご専門(のひとつ)の野崎さんが、読者にしかけた頭の柔軟体操です。これも数学なのか、という驚きと楽しみを味わえること確実です。
吉村仁「『カジノ資本主義』の破綻は数学で証明できる」。短期的な株式や外国為替の取引は、自由市場経済において日常的で当然の活動ですが、これがいずれ必ず破綻する!? ということを、「素数ゼミ」で著名な生物学者・吉村教授が喝破します。こわい話ですが、冷静な論理の進め方はとても美しいのです。

本特集のナビゲーター山本貴光さんによる「ブックガイド 発見と難問の森に遊ぶ」と、カリフォルニア大の若き天才数学者テレンス・タオ「素数の研究」が巻末を飾ります。厳選48冊の数学本、タオが明晰でやさしい語り口(山本さんの翻訳によるもの)で解く、数学のおもしろさ奥深さを、ぜひ本誌でお確かめください。