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能楽師・安田登さんの『能 650年続いた仕掛けとは』(新潮新書)刊行記念イベントとして、安田登さんと『数学する身体』(新潮社)の独立研究者・森田真生さんの対談が、東京のカメリアホールで開催されました。

「能を数学で、聞く」がテーマの顔合わせも内容も異色の対談でしたが、ふたりは奇妙にも根底で繋がってゆきます。そんな200人近い参加者の熱気にあふれた会場の様子を、ふたりをよく知る哲学者・下西風澄さんにレポートしてもらいました。

特別寄稿『人間を変えるメディア、「能」』を前編、後編の二分割で配信します。

10月23日(月)
デビット・フィンチャーが手掛けるネットフリックスのドラマ『マインドハンター』にハマる。

原作は元FBI捜査官ジョン・ダグラスの経験から書かれたノンフィクション『FBIマインド・ハンター—セックス殺人捜査の現場から』。『羊たちの沈黙』の主人公クラリスの上司クロフォードのモデルだそうだ。サイコパス、シリアルキラーという概念が生まれ、FBIに犯罪者プロファイリング手法が生まれるまでを事実に基づいて描く。

エド・ケンパー、ジェリー・ブルードス、リチャード・ペックといった実在のシリアルキラーを役者が演じる。『ハンニバル』『クリミナル・マインド』といったドラマほどグロテスクではないが、見ていると、事実を元にしているからこそのリアルな気色の悪さが残る。『ゾディアック』を見ているときの感覚に近い。

第1話、2話、9話、10話をフィンチャー自ら監督している。有名監督がドラマを撮ることには慣れてきたが、さすがにフィンチャーともなると、なんか得した感じがある。

フィンチャーと言えば一つのカットに何十テイクも撮るので有名だが、このドラマもそうやって時間をかけて撮ったのだろうか。選挙、台風、『マインドハンター』となんだか気ぜわしい週末だった。気がまぎれた。

10月24日(火)
兼任している「新潮」12月号の校了期間になった。文芸誌の編集者はここから、新年号、年末進行になる2月号とかなりあわただしい。この日記も予告なく、妙に短くなったらお察しください。

佐藤友哉さんの中篇小説が久々に掲載になるので、明日の校了前に再校ゲラを最寄りの駅に持っていく。

新作「神がかり」は、「新潮」2013年新年号に書いてもらった「丑寅」の世界観を受け、登場人物の6年後を描いた怪作である。主夫として子育てに追われる男が、新興宗教に人生を奪われた過去に脅かされる。大人になった「ユヤタン」の世界が成熟しつつあると感じた。

佐藤さんに初めて会ったのは、北海道から東京に出てきて、『クリスマス・テロル』が刊行された前後、2002年だった。「新潮」初出は2003年秋に書いてもらい、2004年新年号に掲載した「慾望」。出会ってからもう15年の付き合いになるのか、佐藤さんが21歳の時から付き合っているのか、と思うと、親戚のおじさんのような気持ちになる。

10月25日(水)
セクハラ疑惑で揺れるハリウッドの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインの問題を、昨日のTBSラジオ「たまむすび」のコーナー、町山智浩「アメリカ流れ者」のポッドキャストで聴く。

よく知らなかったのだが、この話、もう卑劣なセクハラ男ハーヴェイ・ワインスタインが業界を追放された、というだけでは済まなくなっているのですね。

グッド・ウィル・ハンティング』でワインスタインの世話になっていたせいか、被害にあったグウィネス・パルトロウの元恋人であり、ローズ・マッゴーワンがレイプ被害にあっていたのを知っていたのに黙って何もしないでいた、俳優で監督のベン・アフレックが非難を受けたり。

また、元恋人の女優ミラ・ソルヴィノが被害にあっていたのを知っていたのに、ワインスタインが『パルプ・フィクション』からの恩人なので、何も動かなかったクェンティン・タランティーノ監督も評価を下げたり。

特に、タランティーノはレイプ被害にあった女性が男たちに復讐するという映画を何本も撮ってきているのだから問題だ。映画でも小説でもそうだが、いくら作品と作者は別物といっても、作品では弱者が強者に勝つ話を書いているのに、現実では強者が弱者を支配しようとするのを黙認していては、説得力を欠く。日本でもきっと至る所に同じような構造の問題はあるだろう。強者の周囲の人間は「黙っていることも罪」なのだとつくづく感じる強烈な事件だ。

10月27日(金)
ジャンシー・ダンの『子どもが生まれても夫を憎まずにすむ方法』を読む。著者はシンディ・ローパーの伝記などで知られる作家で、夫も同じ職業だそうだ。

訳者が当サイトで「村井さんちの生活」を連載している村井理子さんということで手に取ったが、予想以上に強烈な本だった。村井さんの訳している本は『ブッシュ妄言録』、『ローラ・ブッシュ自伝』、『ゼロからトースターを作ってみた結果』『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『兵士を救え! マル珍軍事研究』とジャンルが千差万別で、どれもみな面白い。世の中のもやもやとした霧を晴らしてくれる「気づき」が必ずある。

ニューヨークの子育て夫婦の話なのだが、読んでいて驚くほど身近に感じる。どこの国でも、男は無自覚にか故意にか家庭の問題に向き合うことから逃げる。ジャンシー・ダンの夫のカッコ悪さは、今後、作家を続けていけるか心配になるほど。

妻からの心の叫びでも一冊書けたであろうが、このエッセイ集の白眉は後半にある。妻と夫がそれではどのように歩みよればいいか、という実践のアイデアに満ちているのだ。

この手の夫婦の問題は、自分のうちだけのトラブルだろうか、と思いがちで、なかなか恥ずかしくて外に相談しにくい。あとで、他の夫婦の話を聞いて、なんだ、どこのうちでも同じようなことが起きるんだ、と知ったりする。男女問わず、夫婦関係、子育てで悩んでいる人は、こういう問題が普遍的でありふれたものだと知るために、 そして先達たちの苦闘のノウハウがあると知るためにこの本を読むといいと思う。
 
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