9月6日、松本。クラリネットの音が滑らかに響きわたり、一夜かぎりのGigが始まりました。ClassicとJazz、小澤征爾さんと大西順子さんが出会った奇跡の『ラプソディー・イン・ブルー』。客席では、この日のセッションのきっかけを作った村上春樹さんがじっと演奏に聴き入っています。そしてオーケストラが鳴り終わった後は、満場のスタンディング・オーベーション――。聴衆は指揮者小澤征爾の復活と、大西順子トリオとサイトウ・キネン・オーケストラの素晴らしい共演に惜しみない拍手を送り続けたのです。
『考える人』秋号では、村上春樹さんが緊急寄稿、自身が「信じられない展開」と言う公演実現までの軌跡を描きます。大西順子さんのピアノ・ソロと小澤征爾さんの指揮が生み出した繊細にしてダイナミックな演奏同様、「厚木からの長い道のり」と題されたロング・エッセイは、スリリングな熱気に溢れています。
 また、9月30日深夜に放送されたNHK・BSプレミアム「小澤征爾 復帰の夏」では、当夜の演奏だけなく、大西さんとの共演の舞台裏も紹介され、マエストロの二年ぶりの復活とともに大きな反響を呼んでいます。
「そう、すべては完璧だったのだ」――村上さんが言うように、厚木の小さなジャズ・クラブでの偶然からサイトウ・キネンのステージまで、「松本Gig」は奇跡と呼ぶにふさわしい出来事でした。
『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(新潮社刊)で村上さんとマエストロは、良き音楽への思いを深く語り合いました。今号の『考える人』は、まさに良き音楽の誕生の瞬間に立ち会った村上春樹さんのライブ感溢れる文章をお届けします。