第12回小林秀雄賞を受賞した画家の山口晃さん。贈呈式のスピーチでは、五代目古今亭志ん生と小林秀雄の話し方が似ているという流れから、志ん生風小林秀雄という声真似をご披露くださり、特徴を見事に捉えた語り口に会場は大いに盛り上がりました。
 受賞作の『ヘンな日本美術史』(祥伝社)は、「ひたすら古い絵の感想を述べていく」カルチャースクールでの講義を元に、4年以上の歳月をかけて練りに練られた力作です。今号では山口さんにご登場いただき、執筆の経緯や美術観を語っていただきました。

『ヘンな日本美術史』では、明治期の西洋絵画の流入が日本美術にいくつもの断絶を引き起こしたことが指摘されています。なかでも大きな断絶とは、「パース(遠近法)の登場」と「筆を使わなくなった」こと。順当な技術に思える遠近法が断絶を引き起こすとはどういうことなのでしょう? そしてこれらの断絶が生んだ大きなとりこぼしとは? 詳しい論考は本誌インタビューと受賞作をあわせて、じっくりお楽しみください。
 山口さんは美大在学中に西洋偏重の流れに疑問をおぼえ、それらの断絶に気が付きました。そして自分の中の日本と向かい合います。
「自分にとっての日本とはなんだろう。たどり着いたのは子供の頃からの広告の裏のお絵かきでした」
 幼いころから、飽きることなくボールペンや鉛筆で細かく描いていた、宇宙戦艦やカブトムシ。このお絵かきは山口ワールドの魅力の源と言えるでしょう。

 そんな山口さんの「お絵かき」作品を見ることができる個展が、現在開催されています。(群馬県立館林美術館にて、2014年1月13日まで。)
「画業ほぼ総覧 お絵描きから現在まで」というタイトルからわかるとおり、「百貨店圖 日本橋三越」などの代表作はもちろんのこと、自画像をはじめ美大生の頃に手掛けた習作の数々。参考資料として幼少時のお絵かき、高校時代の文芸部部誌、卒業アルバムの表紙絵まで、画家・山口晃を形作ってきた作品が出そろいました。
 三浦しをんさんの小説『風が強く吹いている』(単行本版、小社刊、右上)の表紙を飾った作品も久々の登場です。文庫版(小社刊、右下)の表紙の原画と並んで展示されています。

 さらに会期中は、新作「偽史和人伝中 茸取物語(ぎしわじんでんのうち たけとりものがたり)」の製作が進んでいます。地元・群馬の上毛かるたを題材にしたもので、読み札と絵札の両方に遊び心が埋め込まれ、眺めては読み、笑みがこぼれる楽しい作品です。
 山口さんが高校を卒業するまで過ごした群馬で、原画の迫力に触れてみてはいかがでしょうか。お近くの方はどうぞ足をお運びになってご覧ください。