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11月7日(火)
劇団ロロ(読み方は「ろろ」)の公演「父母姉僕弟君」を見に、新宿一丁目のシアターサンモールへ。

「劇団ロロが今面白い、脚本・演出の三浦直之がいい」と、「新潮」編集部の杉山くんに聞いたり、ポップカルチャーを扱ったヒコさんという方のサイト「青春ゾンビ」で読んだりして(関係ないが、このサイトでの、先日の新しい地図「72時間ホンネテレビ」についての文章、なんとも感動的だ)、とても気になっていたが、はじめて見た。

「父母姉僕弟君」は彼らの代表作の一つだそうだ。今回はロロ×キティエンターテインメントという形で上演され、今回の再演では、音楽を曽我部恵一(サニーデイ・サービス)が担当している。

演劇の新しい才能に触れるときのわくわくする感じは、ほかにはないものだ。生で演者を見るからこそ、自分にあうかあわないかがすぐ分かる。ロロにはすごく肌にあう舞台だった。複雑な構成なのにポップでカラフルでノイジー。80年代にはじめて高橋源一郎や岡崎京子を読み、夢の遊眠社や第三舞台を見たあのころの感覚を思い出した。チャーミングでユーモラスで、センチメンタルだが決して甘すぎない。過度に感情的にならないよう(エモくなりすぎないよう)うまく抑制されている。

亀島一徳、島田桃子、望月綾乃さんら役者もみんな魅力的で、技術が高く、マンガみたいな演技も厭味なくこなし、歌も歌う。何人かラストで泣いている観客がいた。ニュージェネレーションの出現を予感させる舞台だった(いとうせいこうさんが参加している口ロロ(読み方は「くちろろ」)というラップグループがあって、ここは劇団「ままごと」と縁が深いがそれとは関係ないらしい。間違えやすいし、読み方も難しいな)。

11月8日(水)
結婚差別の社会学』という強烈な本を今年5月に刊行した斎藤直子さんの「おさい書店〜女性の語り・部落問題・ラテンアメリカ〜」というブックリストが勁草書房のネットにあがっていて面白い。

カテゴリーの枠組みが珍しいせいで、住井すゑとイザベル・アジェンデとジュンパ・ラヒリが、『ときめきトゥナイト』と『町でうわさの天狗の子』が、『日本の聖と賤』と『カムアウトする親子』が並べられる。あらためて、選書とはDJ的な試みだと思う。普段並ばないものを並べることで新しい意味や価値が生まれる。

斎藤直子さんのパートナーは、『断片的なものの社会学』や芥川賞候補作となった小説『ビニール傘』の著作のある岸政彦さん。二人して社会学の新しい地平を切り開いている。

11月9日(木)
松家仁之さんが10月末に出した4作目の長篇小説『光の犬』の打ち上げをする。松家さんはもちろん「考える人」の創刊編集長でこのメルマガを8年間書いていた、あの松家さんです。

新潮」連載時に原稿を1年半受け取りながら、松家さんが小説家としてまったく違う一歩を踏み出している、とずっと感じてきた作品で、はっきりと傑作だと思う。

北海道東部の小さな町を故郷とする添島家の3代が、終わりに向かっていく姿を静かに描く。自分の家族、一族、死んでいった祖父母のことを思い出しながら読んだが、おそらく多くの読者が同じような思いに駆られることだろう。何度か会社で読んでいて、慟哭しそうになった。ただ泣くのではなく、心の奥底から悲鳴をあげそうになった。人生において何度も読み返す大切な一作になるであろう。

毎日新聞に載った鶴谷真記者のインタビューがまた素晴らしいので、こちらもリンクを張っておきます。

11月10日(金)
野田秀樹さんの英語劇“One Green Bottle”を見に、池袋芸術劇場シアターイーストへ。

7年前に中村勘三郎さんとの現代家族劇として構想された三人芝居「表に出ろいっ!」の英語版で、かねてからの野田さんの盟友キャサリン・ハンターとグリン・プリチャードを迎え、キャサリン=父、グリン=娘、野田=母の配役で世界ツアーをおこなうという。

7年前、間近で階段でもつれて転がり落ちてくる勘三郎さんと野田さんを見た時の衝撃は忘れられない。ベテランの二人が階段から落ちるという滑稽な演技をこれだけ真剣にやるのか、とびっくりした。そして娘役に当時抜擢された黒木華さんのその後の活躍ぶり。まさかベルリン国際映画祭最優秀女優賞をとったり、テレビドラマの主演を果たしたりするようになるとは思わなかった。記憶に残る舞台だ。

その7年前にはスラップスティックコメディだった芝居が、今回はがらりと演出が変更され、台本も書き加えられ、ホラータッチになっていておおいに驚く。なんとなくデビッド・フィンチャーの映画『ゲーム』を思い出した。

新潮」で担当していた高村薫さんの『土の記』が野間文芸賞受賞! 快哉を叫ぶ。
 
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