随筆 小林秀雄

二十五 真の良師とは

池田雅延

隆慶一郎(りゅう・けいいちろう)さんも、小林秀雄先生を「先生」と呼んでいた。私が妬(や)けるほどの思いをこめて「先生」と呼んでいた。隆さんは、昭和五十九年(一九八四)九月、「吉原御免状」をひっさげ……

 

随筆 小林秀雄

六 いかに生きるべきか

池田雅延

小林秀雄の言葉は、それを話題にする側が、入試問題や評論文のようにでなく、自分自身の出会いの経験として話しさえすれば、電光石火で相手の胸に届き、波立てると前に書いた。しかし、それがそうとは限らないこ……

 

分け入っても分け入っても日本語

「林」「森」

飯間浩明

日本語の「林」と「森」は、どこが違うのでしょうか。それを考えるとき、つい、漢字の形を手がかりにしたくなります。「木」が2つの「林」に対して、「木」が3つの「森」。数学的には、林より森のほうが大きい……

 

ソマリ人のきもち

マルコ・ポーロの見た(聞いた)ソマリ世界

高野秀行

前回まで足利尊氏の一歳年上であるイブン・バットゥータが訪れたソマリ世界を紹介してみたが、今回はさらに時代を五十年ほど遡り、かの有名なマルコ・ポーロ(以下、マルコ)に登場いただこう。マルコの生涯は不……

 

おかぽん先生青春記

大学入学前後のこと

岡ノ谷一夫

僕が浪人中に祖母が死んだ。心筋梗塞であった。すると父は、「人間いつ死ぬかわからない。好きなことやれ」と言ってくれた。これにより僕は祖母を亡くしたが未来を得た。説明が必要であろう。僕の一家は、水道工……

 

随筆 小林秀雄

十三 桜との契り

池田雅延

小林秀雄先生は、桜も好きだった。六十歳を過ぎてからだが、ほぼ毎年、花見に出かけた。昭和三十七年(一九六二)、六十歳、長野県高遠城の「血染めの桜」に始まり、三十九年、青森県の弘前城、四十年、岐阜県根……

 

分け入っても分け入っても日本語

「ピンクい」

飯間浩明

日本語の基本的な色名である「あか」「あお」「しろ」「くろ」には、「みどり」「むらさき」など後発の色名にはない特徴があります。それは、「赤い」のように「い」をつけて形容詞になることです。昔ならば「赤……

 

安田菜津紀の写真日記

「元旦」のない国から

安田菜津紀

1月1日、新しい年を迎えた日。私はイラク北部、クルド人自治区の主要都市アルビルの救急病院にいた。日がどっぷりと落ちてもなお、遠くから切れ目なく救急車の音がけたたましくこの病院をめがけて近づいてくる……

 

HTML版メールマガジン

行きたくなる本屋さん(No.710)

河野通和

意欲的な本屋を営む二人の店主が、立て続けに自著を刊行しました。2016年1月に東京・荻窪でTitleを開業した辻山良雄さんの『本屋、はじめました――新刊書店Title開業の記録』(苦楽堂)と、20……

 

イタリアン・エクスプレス

イタリアの島、瀬戸内海の島

内田洋子

過日、日本に帰っていたときのこと。南部イタリアの農家から頼まれて、日本の小麦粉事情について調べていた。面白そうなパン店特集の雑誌が目に止まり注文したものの、二、三日後に迫っていた出張出発までに配達……

 

すみっこが好き その2

すみっこが好き その2

大高郁子

兵庫県生まれ。イラストレーター。 京都精華大学デザイン学科卒業。 季刊誌「考える人」の連載「向井万起男のどんな本、こんな本」の挿絵を担当。 主な仕事に、吉田武著『はじめまして数学』『はじめまして物……

 

村井さんちの生活

友と私と大統領

村井理子

1年ほど前、同じ中学、高校に通った同級生から、数十年ぶりにソーシャルネットワーキングサービスを通じて、友達申請という形で連絡があった。最初は誰だかわからなかったが、掲載されていた写真を見て、しばら……

 

随筆 小林秀雄p>

十五 考えるという言葉

池田雅延

新潮社の季刊誌『考える人』は、今春、多くの人に惜しまれながら休刊のやむなきに至ったが、創刊以来掲げ続けた「plain living & high thinking」のモットーどおりに、考えるということ……

 

地球の音

サラウンド

細野晴臣

渚……なぎさ感覚って呼んでいるんだけど、そういうのが好きです。いまもちょっと渚感覚に近い。海でぼくが好きなのは遠浅の珊瑚の海。そこで上半身は砂浜に寝そべって、腰から下は海の中に浸かっている状態。そ……

 

安田菜津紀の写真日記

大熊へ

安田菜津紀

抜けるような青空だった。駆け抜ける風が微かに汐の香りを帯びている。波音が近い。時々木々の彼方から、穏やかな鳥たちのさえずりに交じって、短く鋭い鳴き声がこだまする。キジたちが山を練り歩いているのだろ……

 

安田菜津紀の写真日記

原点、子どもの目線から

安田菜津紀

裏路地を覆う果物の匂い、絶えず埃の舞う道端で物乞いする子どもたち、その手を握ったときの温かさ。14年前に過ごした日々を、今でも昨日のことのように思い出す。伝える仕事の原点。それは高校生の時に訪れたカン……

 

Rhythm & Rhymes

あぁ、この物語は、空想の物語であるのに、より私たちの日々に近い。

松崎ナオ

幼い頃、人見知りが激しかったため、1人で過ごす時間が多かった。でも、部屋で遊ぶのはキライで、外に出て現実と空想の中、ぐるぐる遊んだ。目についた虫や動物の目線を想像してみたり、木々の気持ちになったつもり……

 

御つくりおき――京都のひととモノとのつきあいかた――

03 なんちゃって茶会のお菓子を桂の中村軒でこしらえていただく

入江敦彦

茶の湯は奇妙な世界です。洛中の職人街で堺の商人が完成させた文化は、公家ではなく武士の教養として発達しながら、いつしか京の根幹をなす美学になりました。娯楽でありつつ哲学であり、禅宗では修行の一部とな……

 

『人間をお休みしてヤギになってみた結果』試し読み

02 魂デンマーク、コペンハーゲン(クッソ寒い)

トーマス・トウェイツ,村井理子

ハイ、僕はただいま間違いなくコペンハーゲンにおります。道路を渡ろうとしたら、ライクラ素材の服を着た、ムッキムキのデンマーク人が、車輪のついたクロスカントリー用のスキーを履いて足早に通り過ぎて行った……

 

イタリアン・エクスプレス

結婚の季節

内田洋子

初夏が来て、胸が高鳴る。一年近くも前から、その日をカレンダーに赤丸を付けて待っている。ローマ近郊にある山村の教会にて挙式、そして屋外での披露宴に招待されている。最近イタリアで結婚式に呼ばれることは……