村井さんちの生活

老犬、旅立つ

村井理子

1年前、鼻腔内に悪性の腫瘍があることがわかり、闘病を続けていたわが家の老犬トビーが、先日、静かに旅立った。13歳と6ヶ月だった。本当に安らかな最期で、家族の誰も、朝になるまで気づかなかったほどだ。……

 

Rhythm & Rhymes

もしかして自分自身の体験を重ねているところもあるのかもしれない。

大沢伸一

例えば誰かに何かを伝える時に心の中、頭の中にある感情やイメージを言語に変えて理解し、実際に言葉として発する。この行為は日々何の疑問もなく繰り返し行われている。しかし、実際には言葉にならない感情とい……

 

村井さんちの生活

ああ、夏休み

村井理子

始まる前はあれだけ恐れていた息子達の夏休みも、いざ始まってみればあっという間に日々は流れ、いつの間にか折り返し地点を過ぎていた。ジリジリとした厳しい暑さも少し和らいで、ここ数日は朝晩が過ごしやすく……

 

ソマリ人のきもち

お客様は神様?

高野秀行

2月上旬、ソマリアで大統領選挙が行われ、モハメド・アブディラヒ・ファルマージョが当選した。選挙といっても、投票したのは国会議員だけだし(全国民が投票する予定だったが、投票所がイスラム過激派アル・……

 

安田菜津紀の写真日記

"難民"とは誰なのか

安田菜津紀

時折見つめ返す一枚の写真がある。闇夜に浮かび上がる街が、まるで宝石をちりばめたように輝いている。初めて見る人はともすると、日本の都市部の夜景と見間違うかもしれない。その写真は2009年、シリアの首……

 

イタリアン・エクスプレス

思いもかけないヴェネツィアが

内田洋子

高いところが好きなので、いつも上を見ながら上がれる場所がないか探している。イタリアには古い町が多く、聖堂や時計台、中世の城の監視塔など、堂々とした石造建築物が多い。どれも古く、国宝や世界遺産に指定……

 

随筆 小林秀雄

十二 「うまい店」はどううまいのか

池田雅延

前回、最後に、小林秀雄は知の人と思われている、だから、「甚五郎」を目にした瞬間の小林先生の直観は、本居宣長に初めて出会ったときの直観と同心円を描いていたといっては顰蹙を買うかも知れないが……と書い……

 

イタリアン・エクスプレス

子供は忙しい

内田洋子

小学校は、週あたり二十二時間分の授業時間を振り分けて学ぶ。登校するのは、月曜日から金曜日まで。午後の授業が終わると、多くの子供たちが稽古事へ直行する。共働きの親が多い都市ともなると、複数の放課後の用事……

 

イタリアン・エクスプレス

本と山村と老婦人

内田洋子

秋を目前に、山奥の小村で本の市場が立つと聞いた。ヴェネツィアで行きつけの書店が教えてくれたのだ。山村で本を売る、という様子が想像できない。周囲に尋ねても、その村のことを知る人はいない。「行ってみるしか……

 

安田菜津紀の写真日記

闇の中を生きながら

安田菜津紀

のろのろと進む車の群れ、クラクションの間を駆けていく人々。フィリピン、マニラはいつものように喧騒に包まれていた。きらびやかなネオンから隠れた路地裏の暗闇に、彼らの“居場所”はあった。闇に紛れた子ど……

 

随筆 小林秀雄

十六 身交う、とは……

池田雅延

小林秀雄の名講演のひとつに、「信ずることと考えること」(「新潮CD 小林秀雄講演」第二巻所収)がある。この講演は、昭和四十九年(一九七四)八月、鹿児島県霧島での「全国学生青年合宿教室」に出向いて行……

 

最後の読書

03 子ども百科というテーマパークで

津野海太郎

はじめてはいった書店の平台に分厚い伝記の本が積んであった。A5判で500ページもある大きな本で、『子どもの本のよあけ――瀬田貞二伝』というタイトルがついている。――おや、こんな本、いつのまにでたん……

 

Rhythm & Rhymes

一生の中で何を学び、何を糧にして生き、何を遺していけるか。

D

僕が選んだ本は「聖書」です。Dの世界観、ならびに自分のアイデンティティのベースでもあります。Dの楽曲としてそれが色濃く反映されているのは沢山ありますし、全ての楽曲に当てはまるともいえます。敢えて上……

 

イタリアン・エクスプレス

書店の話

内田洋子

読書の秋。北イタリアの秋冬は長雨も続き、しんとする。本好きにはなかなかの季節の到来だ。ところが、町から書店が消えてしまった。商店街に数軒あった書店が、この数年ですべて閉業した。裏通りにあった古書店……

 

イタリアン・エクスプレス

夏の密かな楽しみ

内田洋子

異常気象なのだろう。五月初旬に三〇度を超える日が続いたかと思ったら、落雷豪雨。がくんと気温が下がって、季節が逆戻りした。衣替えのタイミングを見計らうのが難しい。それでも夏はやってくる。学校は、六月……

 

五木寛之×中島岳志特別対談 親鸞思想の危うさをめぐって

「戦前」は一日にして成らず

五木寛之,中島岳志

私が生まれたのは1932年、5・15事件や満州建国があった年です。そういえば先日読んだ『「天皇機関説」事件』によると当時、陸軍パンフレットというのがあって、大量に印刷されて全国津々浦々のいろんな団……

 

随筆 小林秀雄

二十六 叱られた思い出

池田雅延

新潮社に入り、小林秀雄先生の係を命じられてから二年あまりが過ぎた昭和四十八年(一九七三)の秋であった、PR雑誌の『波』に、先生の新春談話をもらうことになった。『波』は月々の新刊案内を目的とした小冊……

 

最後の読書

06 本を読む天皇夫妻と私

津野海太郎

まもなく明仁天皇が退位の時をむかえる。そのことを知って――いやそれよりも、昨2016年8月、テレビ放送でいわゆる「おことば」にせっして、といったほうがいいかな。――ああ、やっぱりこの方はまぎれもな……

 

おかぽん先生青春記

青春と読書 2

岡ノ谷一夫

やれやれ、前回は眠いのを押して無理矢理エッセイを書いたら「青春と読書」のつもりが「青春と涜書」になってしまったよ。でもむしろそのくらいのほうが人気が出るようで、「人気の話題」で細野晴臣先生を抜いて……

 

イタリアン・エクスプレス

あなたに似た人

内田洋子

友人が、「里心が付いたら行くところがある」と、言った。彼に連れられ着いた先は、ヴェネツィアのアカデミア美術館だった。日本でも展覧会があったばかりの、ベッリーニやティントレット、ティツアーノやヴェロ……