webでも考える人メールマガジン
webでも考える人 ランキング
4週連続1位! 共感が共感を呼び、勢いは止まりそうにありません! 阿古さんの新刊『料理は女の義務ですか』も注目度急上昇!
読書家の方々が異口同音におっしゃるのが、〈行きつくところは古典〉。でも〈古典が読めない〉!? 伊藤比呂美さんや池澤夏樹さんによる「古典復活」に注目です。
シリア難民の人々にも容赦なく寒さは襲いかかります。現地で取材した安田さんがふと漏らした根源的な問いに、イラク人の友人はどう答えたのか。
編集長 今週のメルマガ
 
2月5日(月)
担当者の選書編集部Sくんから熱心にすすめられていた先崎彰容さんの『未完の西郷隆盛』を読む。

先崎さんは75年生まれの気鋭の学者で、専門は日本思想史。自社本だと、ほかに『違和感の正体』(新潮新書)。読む前に想像していたものと全然違った。

大河ドラマ『西郷どん』のタイミングで出された便乗本的なものかと思ったら、まったくそうではなかった。16歳の時からずっと西郷や西郷周辺を追っていた著者の渾身の一冊だった。

また、この本は「西郷隆盛」論ではなく、 その後の思想家が 、それぞれの思う「国のかたち」を西郷隆盛に投影して、何を語ってきたかを問う、「西郷隆盛」を語った人々の思想史、といったたぐいのものだった。だから、俎上にあがるのは、むしろ福沢諭吉、中江兆民、頭山満、橋川文三、江藤淳、司馬遼太郎のほうである。彼らが西郷に何を仮託したかを追う。特に橋川文三の項、気合が入っている。相当な力作で、一気に読まされた。

それにしても「FOCUS」時代のつきあいから約20年、サッカー好きの愛されキャラだったSくん、今や新潮選書のエースといってもいい風格である。この本のあとがきにも「「豪腕」の編集者である」と書かれている。細谷雄一氏の『歴史認識とは何か』のあとがきでの彼への謝辞なども、弟が褒められているかのようににんまりしてしまう。

2月6日(火)
当サイトの記事数が増えてきたので、もう一人校閲者を増やすことに。校閲部部長に新しい校閲者Sさん(女性)を紹介してもらい、あいさつする。

それにしても、当サイトの関係者イニシャルがSの人ばかりである。編集部は現在私以外は、編集者Sさん(女性)とウェブデザイナーSさん(女性)。日記を書いていて、とてもわかりにくい。

「選書編集部の豪腕Sくんから送られてきた原稿を、編集者Sさんが、ウェブデザイナーSさんとベテラン校閲者Sさん(男性)に送ったが、ベテラン校閲者Sさん(男性)が忙しそうなので、校閲者Sさん(女性)にお願いした。」

なんて書いても、さっぱり頭に入ってこないだろうな。
というわけで、兼任している「新潮」編集部の編集者の面々は、矢野編集長、田畑くん、清水くん、杉山くん、とお願いして実名にさせてもらってます。こちらも庶務がSさんなので、編集部6人中3人がSになってしまうところだった。「新潮」の校閲もTさんとSくん。

2月7日(水)
Webでも考える人」編集部の進行Sさんが、親知らずを抜くため、一日入院する。自宅の近くで歯を抜けばいいのに、わざわざ会社の近くの飯田橋の病院で抜くという。親知らずを抜くために往復3時間……。

2月8日(木)
来月3月に久々に海外に行くことになった。パスポートが失効しているので、近くのパスポートセンターへ。こういう場所はたまにくると時間がとまったように感じる。

隣接した写真室で写真をとってもらうと、セゾンパール・アメリカン・エキスプレスカードというクレジットカードをすすめられる。

「このカードなら、どこでも使えますし、初年度年会費無料です。しかも今日ここで申し込んでいただければ、今撮った写真代は無料になりますよ」
「すいません。クレジットカードはいろいろ持っているので、結構です」
「そうですか、それでは写真代1540円いただきます」
「クレジットカード払いでいいですか」
「うち、クレジットや電子マネーは使えないんです。現金のみなんです」
「……」
なんかこういうやりとりもいい感じ。

2月9日(金)
アキール・シャルマの『ファミリー・ライフ』を新潮クレストブックスで翻訳した小野正嗣さんと、大塚の小野さんおすすめの中華料理店で食事をする。

ファミリー・ライフ』は、著者の自伝的な小説。高校入学前の兄がプールの事故で脳を損傷し、発語も思考も困難になり、その後の生活の中で家族が疲弊していく姿を描く。そんな中、主人公の少年は自分の作りだした神様との対話に励まされながら生きる。

芥川賞受賞の前年、脳腫瘍で兄を亡くした小野さんのやさしいタッチが小説の繊細な声を伝えていると強く思う。

2月10日(土)
作家・石牟礼道子さんが亡くなった。

米本浩二さんの『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』が読売文学賞を受賞したばかりというタイミングである。

「考える人」2015年夏号では、著書『食べごしらえ おままごと』を踏まえて、いのちと食の営みをお聞きするインタビューを掲載させていただいた(聞き手は平松洋子さん)。

苦海浄土』を中心とした石牟礼さんの小説は日本の風土が生み出した特異な世界文学だと思う。常に弱者の側にある。

若松英輔さんの石牟礼さんに捧げるツイートに目を奪われた。
 

石牟礼道子さんが亡くなられた。現代日本で最も大きな問いを生きた書き手の一人であり、真の意味における闘士だった。哀悼の意を表そうとする者は、祈りと共に、その書物を読むのがよい。そして読み続けるのがよいと思う。人は死の後も消えることがないとは、この稀代の詩人の確信だったからである。(@yomutokaku - 2018年2月10日)

石牟礼道子を読んだことのない人は『苦海浄土』ではなく『椿の海の記』を読むとよいと思う。そして時が導くのを待ち、『苦海浄土』を開くのがよいかもしれない。今、彼女の作品を読むのもよい。しかし読み続けることは一層重要である。死を経て彼女は、私たちのより近くにいるようになったのである。(@yomutokaku - 2018年2月10日)

石牟礼道子さんには、何度もお目にかかることができた。対談やインタビューの場合もあったが、ほとんどは雑談だった。そうした対話のなかで、数えきれないほどの大切なことを教わったように思う。亡くなり、心は音を立てて痛み、うずいている。しかし同時に、言葉に出来ないほどの感謝の念も尽きない。(@yomutokaku - 2018年2月10日)

メディアは、こぞって「小説『苦海浄土』」の作者として石牟礼道子さんの死を報道するだろう。あの作品をどういう気持ちで書いたかを彼女に直接たずねたことがある。返ってきた言葉は「詩」だった。比喩ではなく、彼女の言葉通り、『苦海浄土』は詩で、石牟礼道子は、稀代の詩人だと、私は思う。(@yomutokaku - 2018年2月10日)

webでも考える人 最新の話題
特集のなかに、ひとの生命に直接はたらきかける食の象徴であるような作品、あるいは人物がいてほしいと編集部では考えました。水上勉『土を喰う日々』か、……
ニューメキシコの旅を終えてロサンゼルスに帰った石内は元気を取り戻し、再びゲティ美術館での展示作業に没頭する日々となった。主任キュレーターとの厳しい……
私たちに最も身近な愛玩動物といえば、犬と猫です。「犬猫」と並べて言いますが、語源についてよく議論になるのは、とりわけ猫のほうです。最近も、テレビ番組で、……
前回、小林先生と井伏鱒二さんの酒の飲み方について聞いてもらったが、小林先生にも井伏さんにも可愛がられ、絶大な信頼を寄せられていた編集者に菅原国隆さんがいる。……
毎年、年末になるとたくさんの友人が「暮れの元気なご挨拶」を日本から送ってくださいます。そのなかの何人かはいつも箱の中に和菓子を同梱してくださる。……
南部イタリアへ行った。道は、一本。土日には公共交通機関が休み、という一帯である。360度、広大な農地があるだけだ。「最寄りの町で開催されるバーゲンに合わせて、……