児童文学界のノーベル賞とされる国際アンデルセン賞作家賞に、『精霊の守り人』『獣の奏者』などの作品で知られる上橋菜穂子さんが決定しました。まどみちおさん以来、20年ぶりの日本人作家の受賞です。
 4月4日発売の春号では、「海外児童文学ふたたび」という特集を組みました。その中で、「私を育ててくれた一冊」として、いま活躍中の書き手のみなさんが、幼い日に読んで大きな影響を受けた本をあげてくださいました。上橋菜穂子さんが「運命の本」として挙げてくださった一冊は、果たしてどんな作家の作品でしょうか。ぜひ本誌をご覧下さい。

 特集は子供のための読書案内ではなく、「子供の頃の自分に再会するために、そして大人になった自分を発見するために」、大人の視点から海外児童文学を見つめ直したいという思いを込めて、「ふたたび」と銘打ちました。実際、大人の目で再読すると、子供の頃には気付かなかった様々な深い意味合いが浮かび上がって驚かされます。スウェーデンを代表する作家で、国際アンデルセン賞にノミネートされたウルフ・スタルクさんはインタビューのなかで、児童文学は「自分の中の『内なる子供』との対話である」と語っています。児童文学を形作っているのは、他ならぬ大人の感性なのです。

 戦後の日本人に、海外児童文学は何を運んできてくれたのか――実体験を元にそれを語ってくださったのは、小学5年生で終戦を迎えた角野栄子さんです。今春、実写で映画化された『魔女の宅急便』は海外で何カ国語にも翻訳され、角野さんは国際アンデルセン賞国内賞など数々の賞に輝いています。寂しかった子供時代、ここではないどこか、別の世界へ連れていってくれる海外児童文学は、単なる娯楽の域を超えて、孤独を紛らわしてくれる大切な心の支えだったと角野さんは語っています。欧米と日本の「孤独」や「自我」の在りようの違いに対する深い洞察に満ち、かつちょっと切ない作家のインタビューをぜひ読んでいただきたいと思います。