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入院中の顛末を鋭い観察眼をもって、冷静かつユーモラスにつづった日記が連続1位。同じような経験をされた方々からも、賛同と共感の声が寄せられています。
去る3/20はイラク戦争開戦から15年目の節目の日でした。今のイラクの混乱を招いた戦争は、私たちには関係のない”遠くの出来事”なのでしょうか。
人気社会学者・岸政彦さんの日記がまたしてもランクイン。人の話に真摯に耳を傾ける姿勢や生活をしっかり見つめるまなざしは、対象がご自分になっても変わりませんね。
編集長 今週のメルマガ
 
3月17日(土)
横浜の開港記念会館にて高村薫さんの大佛次郎賞受賞記念講演会。

タイトルは『小説の現在地とこれから』。現代において、純文学とエンターテインメントの垣根はなぜ揺らいだのか、文学の意味を問い直す、高村さんの最新の文学論である。小説そのものについての講演は久しぶりだそうだ。「新潮」6月号(5月7日発売)に掲載予定。

開港記念会館480名の会場に、700名を超える応募があったのだとか。100年以上も前から建っているレトロな建物で、横浜生まれだが、はじめて知った。遠くからわざわざ来て、高村さんに緊張しながらおずおずと言葉をかける読者の顔を見て、まだまだ多くの熱心な読者が新しい本を待っているのだと勇気づけられた。

3月18日(日)
昨日NHKプレミアムで放映された90分の特別番組「池澤夏樹と世界の果て パタゴニア 冒険の旅」 を見る。

年末に狂言の舞台があったのち、1月9日に池澤さんからいまパタゴニアにいるとメールをいただいて驚いた。旅好きで50か国以上に行っている池澤さんが72歳にしてはじめて訪れる土地。南米大陸の南端、アルゼンチンとチリのあたりがパタゴニアである。日本の三倍の面積だが、人の数より家畜の数の方が多い。日本から飛行機で40時間、世界中で一番日本と遠い地域だ。日々数百キロ移動しながら撮影とインタビューを重ねていたらしい。何もない風景と、まっすぐ立っていられないほどの強風が美しいカメラで収められていて、忘れられないドキュメンタリー番組だった。雑然とした風景の中にマゼランなど冒険者の歴史が重ねられる。再放送があったら、これは、かなりおすすめです。

3月21日(水)
大雪の祝日、久しぶりに翻訳エンターテインメント小説を楽しんだ。

ジョン・ル・カレの『スパイたちの遺産』。古典的傑作と言われるスパイ小説『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の続篇だというので、蛇足的なものだったら悲しい気持ちになるかなと思っていたが、結構いい出来。これなら旧作のファンも読んで損はないと思う。

主人公の引退した元スパイ・ ピーター・ギラムが訴訟をおこされそうになり、行方不明のスマイリーを探さざるをえなくなるという話。かつては年下の脇役だったピーター・ギラムが視点人物となる。読んでいると、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を映画化した『裏切りのサーカス』のゲイリー・オールドマンやコリン・ファースやベネディクト・カンバーバッチのおびえたような、また何かをあきらめたような表情が浮かんでくる(この映画ではカンバーバッチがピーター・ギラム役だった)。

冷戦が終わった今の時代に、しかもスパイもののシリーズの続篇として、きちんとこういう面白い小説が書かれるというのは驚異的というか奇跡に近いことだ。夜に一人読んでいたら、ああ、自分も大人になったんだな、こういう良さがわかるようになってよかったな、と感慨深く感じた。人生に不思議と愛着が湧いてくる。

3月22日(木)
先週ロサンゼルスで滞在したホテルが素敵だったので、バスローブを羽織った写真を家族にLINEで送ったのだが、ちょうどそのとき、娘は男友達に「お父さんって、どんな人?」って尋ねられ、その写真を見せたらしい。

ひょえー、なんたる恥かしみ。
娘よ、そんな写真、人に見せるなよ。
でもなんでこんなに私は恥ずかしいのだろう?
バスローブ姿を家族以外に見られたこと?
いいホテルでちょっと調子にのっている表情を見られたこと?
まだ会ったことのない同性の若い人に自分の姿を見られたこと?
きっと彼もいきなり変な写真を見せられて言葉に詰まったのだろう、「人格者だね」と言葉を返してきたらしい。このバスローブ写真のどこに人格者が……!?
 
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