トーチと共に山をのぼる人々。にぎやかな夜の始まりだ。
 

 今年3月20日、イラク戦争の開戦から15年という月日が経った。この日私はイラクの北部、クルド人自治区のアクレという街を訪れた。ちょうど季節はクルドの人々にとってのお正月にあたる“ノウルーズ”。アクレはとりわけ盛大にそのお祝いが催されることで知られている。
「15年前のこの日は山の上に避難して、お祝いどころではなかった」と人々は口々に振り返る。太陽が山向こうに沈み、空が夕やみに包まれる頃、人々がトーチを手に山を目指す。
 次々と打ち上げられる花火が空を覆いつくすように広がると、そのドーンという野太い音以上に、人々の歓声が響き渡る。ふと、ある花火写真家さんが語った言葉を思い出した。「戦争が起きた時、火薬は人を傷つけるものとなる。けれども平和な時は、花火となり、人々を喜ばせる」。
 イラクにはいまだ不安定な地が残され、家を追われた200万人が故郷を離れ避難生活を送っている。ここに生きる人々の日常が、戦火ではなく平和の火で満たされていくように。そんな願いを込め、空へとシャッターを切った。

アクレの街は、新しい年の到来を祝う人々と共に華やいだ夜を迎えていた。
 

 

安田菜津紀 写真展開催

安田 菜津紀 写真展「The Voice of Life 死と、生と」

オリンパスギャラリー東京
期間:2018年4月13日(金)~4月18日(水)
午前11:00~午後7:00 最終日 午後3:00 木曜休館 入場無料

オリンパスギャラリー大阪
期間:2018年5月7日(月)~5月17日(木)
午前10:00~午後6:00 最終日 午後3:00 日曜・祝日休館 入場無料

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