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初登場1位! 無事に心臓の手術を終えて目覚めた村井さん、人造人間キカイダーと仮面ライダーを足して2で割らない体になって笑いが止まらない……!? もはやホラー!
毎週木曜日に発行している「Webでも考える人」メルマガ、中でも編集長の日記に温かい声を寄せていただいています。今回は、琵琶湖のほとりで村井理子さんにお会いした話。
古川日出男さん『ミライミライ』の刊行を記念して行われた豪華対談! 文学、そして音楽をフィールドに活躍するお二人の疾走するトークに振り落とされるな!
編集長 今週のメルマガ
 
6月11日(月)
昼、滝口悠生さんとともに注目の劇作家・松原俊太郎さんに会う。松原さんは、AAF戯曲賞大賞を受賞した『みちゆき』で鮮烈なデビューを果たし、『忘れる日本人』『山山』が劇団地点によって上演された昨年あたりから名をよく聞く。彼自身は劇団をもたず、演出もしない。戯曲のみを書く。「悲劇喜劇」でかなり熱く推されているのだが、話をしてなるほど新しい作家だ、と思わされた。

どんな感じの戯曲でどのように注目されているかは、ネットでも読める佐々木敦さん宮沢章夫さんの文章に詳しい。

夕方から、『ペインレス』を刊行した天童荒太さんがTBSテレビ「ゴロウデラックス」に出演するので、付き添いに行く。稲垣吾郎さん、外山恵理さん、すごくスマートな印象で感じがいい。正味23分の放送のために、90分ほどノンストップで対話をつづける。こんなにまじめなバラエティー風教養番組が8年も続くのは、稲垣さんの篤実さとスター性のおかげではないだろうか。読んでない読者に向けて間口の広い会話をしたかと思うと、作家の目を見つめ急にかなり踏み込んだ話をする。そのアクセルの踏み方が自由自在。努力し続けるアイドルのすごみを見た。

6月12日(火)
米朝首脳会談の日。
そんな日に、ちょうど一週間前に発表された、「万引き家族」でカンヌ映画祭パルムドールをとった是枝裕和さんがネットに書いた文章「「invisible」という言葉を巡って——第71回カンヌ国際映画祭に参加して考えたこと——」を読んでいろいろ考えさせられた。

「大きな物語」に回収されていく状況の中で映画監督ができるのは、その「大きな物語」(右であれ左であれ)に対峙し、その物語を相対化する多様な「小さな物語」を発信し続けることであり、それが結果的にその国の文化を豊かにするのだ。

勇気づけられる文章だ。読んだ驚いたのは、公開前から日本でもずいぶんと偏見に満ちた反応をされてきた作品だが、誤解に満ちた反応をするのは、各国のマスコミも同じなのだということ。韓国での報道について。

何より印象に残ったのは「映画が絶望と痛みという井戸から汲み上げられるものならば、私はその井戸を家族に求めている」という一文。素晴らしく文学的な表現なのだが実は僕は全くこんなことは話していない。

言葉はこんなにも伝わらないものか。

6月13日(水)
高橋源一郎さんと平田オリザさんの対談を掲載したが、そのテーマになっている青年団の新作「日本文学盛衰史」を見に行った。年間ベスト級に面白かった。

この面白さは、おそらく明治時代の文学史にどのくらいなじみと興味があるかにもよっていて、もちろんあまり知らなくてもわかるように書かれているが、知っていれば知っているほど面白い。文芸誌「新潮」に19年いて、明治時代の文学や思想に関心のある著者とつきあってきた私は、まさにこの作品にぴったりの観客だろう。

舞台は四場、一場が1894年(明治27年)の北村透谷の葬儀。二場が1902年(明治35年)の正岡子規の葬儀。三場が1909年(明治42年)の二葉亭四迷の葬儀。四場が1916年(大正5年)の夏目漱石の葬儀。この設定がうまい。毎回20人ぐらいの作家が集まり、テーブルを囲んで故人をしのんだり、討議したりする。見ているうちに、だんだんと、森鴎外と二葉亭四迷と田山花袋と樋口一葉が本当にそこに隣り合わせでいて会話をしているのを覗き見ている気持ちになる。

文学者の歴史が主人公となった完全なる群像劇だ。漫画や小説はそれぞれの章で視点人物や主人公が必要となるし、ロバート・アルトマンなどの映画の群像劇でもそれぞれのカットには主人公がいる。舞台「日本文学盛衰史」には狂言回しはいても主人公はいない。演劇はこういうことができるのだなあ、と感動した。

高橋源一郎の原作を受けて、時空に歪みが生じたり、現代の出来事が紛れ込んだりするが、それも作品に「批評性のある軽み」を与えているようで心地よかった。平田オリザさん、恐るべし。

関川夏央+谷口ジローさんの漫画『「坊っちゃん」の時代』の面白さが、高橋源一郎さんの背中を押して『日本文学盛衰史』を書かせ、その面白さが原作の魂を見事に活かしたオリジナルの戯曲「日本文学盛衰史」を平田オリザさんに書かせた。この精神のリレーの美しさ!

6月14日(木)
同世代の最高のコラムニスト山崎まどかさんの書評エッセイ集『優雅な読書が最高の復讐である』を読んだ。14年ぶりの書評集で、僕が「新潮」でお願いしたものもいくつか載っている。

カバー題字デザインが、ニューヨークのアーティスト、リアン・シャンプトンで文字だけなのにとてもかっこいい。話題の映画「レディ・バード」や「イカとクジラ」の題字の人。ピンクやブルーの本文紙のところは二段組みでくまれていてここも凝っていて、彼女が三十代、四十代に愛したカルチャーの時間が封じ込まれている気持ちになった。

タイトルはカルヴィン・トムキンズのノンフィクション『優雅な生活が最高の復讐である』のもじり。彼女は編集者のタイトルの提案に最初は抵抗感があったらしいが、ぴったりなタイトルだと思う。そう思う読者に読んでほしい。
 
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