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編集長 今週のメルマガ
 
「短篇小説を読む」というシリーズを新しく始めます。

第一弾として、レベッカ・マカーイの短篇小説「赤を背景とした恋人たち」を訳者の藤井光さんの解説つきで全文公開しました。

新潮クレスト・ブックスの新刊としてマカーイの『戦時の音楽』という短篇集が刊行となりますが(明日29日が発売日)、この新しくて不思議な小説家の魅力をまずはウェブで味わってもらおうと、短篇小説を一つまるまる全文公開いたします。

ウェブで海外短篇小説一篇を無料で読めるのはあまり例のないことだと思います。

レベッカ・マカーイは1978年に、言語学者の両親のもとに生まれたハンガリー系のアメリカ人作家です。最も注目すべき現代アメリカ短篇小説作家のひとりではないか、と思います。

今回、紹介する「赤を背景とした恋人たち」は冒頭からしとてもヘンテコです。舞台は現代のニューヨーク、高層アパートメントに住む三十代の女性が主人公。最近になって、夫と別居することになったばかりの彼女のもとに、なぜか、バロック音楽の大作曲家J・S・バッハが時空を超えて転がり込んできます。彼はドイツ語しか話しませんが、外に出たいそぶりもなく、部屋でCDプレーヤーをいじっては後代の音楽を学んでいきます。

この一篇の奇抜な設定や明るいユーモアは収録作品の中でも異色です。ほかのどんな小説家にもない新しい手触りを感じさせます。ぜひ読んでみてください。


6月18日(月)
鎌倉で昼、黒川創さんと「新潮」に掲載した「鶴見俊輔伝」の打ち上げ、単行本の打ち合わせをする。秋には刊行できそうだ。

黒川さんにとって鶴見俊輔さんは師のような存在で、そういう人物をどういう距離感で書くかはかなり難しいことだったと思う。客観的記述によりすぎると、味もそっけもない感じになるし、主観的記述にしぼるには、まだ鶴見さんが亡くなって間がなさすぎる。この難しい距離を、見事に黒川さんはコントロールして書いたと思う。膨大な鶴見さんの仕事のなかでしぼって何を書くか、その選択にも学ばされた。

編年体の流れもいかしながら、鶴見さんのそのときどきの人生のテーマが浮かび上がってくる。

朝、大阪で震度6弱の地震。宮本輝さんや高村薫さんと無事連絡とれて安心する。このメールマガジンの読者の方にも、きっと被災者がいるだろう。このメルマガが届く10日後には少しは日常が取り戻せているだろうか。2011年の私は、いつまで非日常にいて、いつから日常を取り戻せたか、当時の日記や手帳を読むと忘れていた感情が思い出されてくる。

6月19日(火)
山本貴光さんと吉本浩満さんの名コンビが訳した『先史学者プラトン』(メアリー・セットガスト著)を読んだ。なるほど、この手があったか、と唸らされた。

プラトンの『ティマイオス』『クリティウス』の記述を最新の現代考古学の知見によって読み直す。考古学と哲学を結びつけるような仕事なのだ。

あいまいだった紀元前1万年前の先史時代や最古の都市チャタル・ヒュユクが、実際にあった輪郭のある存在として感じられる気持ちになってくる。信憑性がどうなのかよくわからない部分もなくはないが、読んでて心地よい。

山本貴光さんと吉本浩満さんは、こういうわくわくするような学問的な面白さを発見、紹介する名人だと思う。この二人を追いかけていると、学ぶことが楽しくなる。

6月21日(木)
「Webでも考える人」会議のあと、神奈川芸術劇場へ。先週会った松原俊太郎さんが脚本を書いた地点の「忘れる日本人」を、滝口悠生さんと見る。

三浦基さん率いる京都の劇団・地点がすごいという噂はいろいろと聞いてきたが、実際に見るのははじめてである。チェーホフや太田省吾、太宰治、オーストリアの劇作家イェリネクらの既存のテクストを解体、再構成し、独特の演出や発声法で見せることで名をあげてきた異色の劇団だ。

劇作家が演出を兼ねることが多く、まずは劇作家として認知されることが多い日本の小劇場演劇シーンにおいて、演出家として実験的な試みを行い、注目を集めてきた三浦基さんの存在はかなり貴重である。

テキストをリミックスして見せるような作風なので、なかなか芝居の構造が頭に入ってきづらいが、役者の動きや発声に技術があるので、まったく退屈しなかった。これだけ役者に身体的な負荷がかかる芝居もなかなかない。


「わたしが今から嘘をつくから、あなたはその嘘をつつがなく現実にそれとわかる宝物にして」という台詞が印象的だった。

終演後、山東でセロリ入り水餃子をつつきながら、滝口さんと感想を語り合う。

6月22日(金)
新潮社主催・後援の第31回三島由紀夫賞山本周五郎賞、第44回川端康成文学賞の贈呈式を都内のホテルで。

三島賞は古谷田奈月さんの「無限の玄」(「早稲田文学」増刊女性号)に、山本賞は小川哲さんの『ゲームの王国(上下)』(早川書房)。川端賞が、保坂和志さんの「こことよそ」(「新潮」2017年6月号)。新潮社の文芸編集者としての大晦日が今年も終わった気分である。
 
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