秋号の特集テーマは「オーケストラをつくろう」。異なる背景や事情を抱えた仲間が集まり、心をひとつにしてハーモニーを作り出す喜びと意義に改めて光をあてました。特集の核となるのが、いま世界の注目を集めるベネズエラの合奏型音楽教育制度「エル・システマ」です。「犯罪に巻き込まれる危険を減らす」「合奏することで社会性を身につける」「子どもに生きる希望を与える」といった社会的目標を掲げて39年前に始められた音楽教室です。エリート養成を目的としたものではないにもかかわらず、ここから指揮者グスターボ・ドゥダメルやクリスチャン・バスケス、ベルリン・フィルのコントラバス奏者エディクソン・ルイスといった煌めく才能が次々と世界に羽ばたきました。

 2008年の著書『エル・システマ―音楽で貧困を救う南米ベネズエラの社会政策』でこの画期的制度をいち早く紹介した山田真一さんが、なぜエル・システマのオーケストラの演奏は感動を呼ぶのか、背景を解説してくださいました。

 そして、今号ぜひ読んでいただきたいのが、「100年に1人」の逸材といわれるグスターボ・ドゥダメル氏の独占インタビューです。ストックホルムでの公演の合間を縫って、話を聞かせてもらいました。アルバム制作中のドイツから飛んできて、スウェーデンのエーテボリ交響楽団とのリハーサルを終えた直後の取材でした。隠しきれない疲労の色はあったものの、それでもにこやかに、こちらの質問にひとつひとつ丁寧かつ情熱的に答えてくれました。三十三歳にして世界最高のオーケストラを次々と指揮する若きマエストロは読書家で、深い感謝の気持ちを持って芸術に身を捧げる自らの生き方を、きらめくような言葉の数々で語ってくれました。

 遠からず来日公演が期待できそうなエル・システマ第三世代、テレサ・カレーニョ・ユース・オーケストラの躍動感溢れる演奏もロンドンで聴いてきました。楽器を習いはじめて十年になるかならないかの若い演奏家たちの「喜び」に満ちた姿を誌面でご紹介しています。

 そのエル・システマに触発されて日本でスタートしたのがエル・システマジャパンです。東日本大震災の被災地である福島県相馬市で2012年に相馬子どもオーケストラが立ち上げられ、さきごろ岩手県大槌町でも新たな活動が始まりました。エル・システマジャパン代表の菊川穣さんが日本ユニセフ協会を辞めてこの活動に身を投じるまでに、誰のどんな支援があったのか、そして被災地の子どもたちはどんな思いで音楽を奏でているのか、ジャーナリスト増田ユリヤさんのレポートをお読みください。

 エル・システマのオーケストラの凄味については、クラシック通の赤川次郎さんが、「個人的な事情」も絡めてエッセイに綴ってくださいました。あわせてお読みいただければ幸いです。