今週は、お知らせが2つあります。
1つ目。翻訳家でアメリカ文学者の
柴田元幸さんによる月1回の連載コラム「
亀のみぞ知る——海外文学定期便」の配信を開始します。
海外文学をはじめ、柴田さんがいま最も注目する作品について、毎回自由に書いていただきます。初回は、
ブライアン・エヴンソンが若いころに読んで大きな衝撃を受けた本として、レイモンド・カーヴァーの『
愛について語るときに我々の語ること』を取り上げていることについて。
柴田さんがいま何に興味をもっているか、その最新情報を伝えるコラムです。
2つ目。若きノンフィクション冒険作家・春間豪太郎さんの新連載「
リアルRPG 草原の国キルギスで勇者になった男の冒険」を毎月1、15日に配信します。
春間さんは1990年生まれの冒険家で、行方不明になった友達を探しにフィリピンへ行ったことで冒険に目覚め、自身の冒険譚を綴った5chのスレッドが話題をさらった人物です。2017年に『
-リアルRPG譚-行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』を上梓し、この連載が2作目となります。
人生で思い悩んだ著者が、一人旅をまるでRPGゲームのようだととらえることで自由になっていくという感覚は、27歳の新しい世代ならではのものではないでしょうか。動物たちを引き連れ、様々なスキルや最新ガジェットを駆使しながら、今回の舞台、美しい高原地帯を有するキルギス共和国を旅します。風通しのいい冒険ノンフィクションをお楽しみください。
7月22日(日)
TBSドラマ「
この世界の片隅に」が期待以上に面白く、楽しみに観ている。第2回もとてもよかった。今日は時間があったので、漫画の
原作全3巻と、
映画版を見返してしまった。
こうしてみると、映画版の片渕須直監督が原作のこうの史代さんの仕事に、そしてドラマ脚本の岡田惠和さんらスタッフがこうのさんと片渕監督の仕事に敬意を払いつつ、自分なりに咀嚼して新しい作品を作り上げているのがよくわかる(翌々日の24日火曜日に、アニメ映画版「この世界の片隅に」の製作委員会が、放送中の実写ドラマ版の内容などについて「一切関知しておりません」と表明したことがニュースになったが、私の上記のような印象は変わらない)。
ドラマ版の「いま向いている方が、前なんだ。」というコピーや、「
カルテット」も作った佐野亜裕美プロデューサーの「
……これまで主人公が居場所を見つけていく話を結構やってきたなっていうことをふと思って。居場所をめぐる物語というか、自分なりのテーマでこの作品をドラマにしたいなと思ったんです」
という言葉に、わくわくしてしまう。
7月25日(水)
朝から頭の中をリフレインするメロディー。誰の曲だっけ?椎名林檎だっけ、大森靖子だっけ?と記憶をたどり、やっと思い出した、先日ラジオで聞いた今話題のシンガーソングライター眉村ちあきさんの「
ピッコロ虫」だ。
眉村ちあきさんという不思議ちゃん系の地下アイドルを出身のシンガーソングライターを知ったのは、プロ・インタビュアー吉田豪さんのツイッターで数か月前。今月頭にラジオ番組「
アフター6ジャンクション」に出演して、奇矯なキャラクターでありながら、意外と歌がうまくて説得力があることを知った。
とはいえ、忘れていたのだが、記憶の奥底にメロディーが眠っていたらしい。私はこの曲を1回しか聞いてない。それなのに、曲が頭の中でリフレインするとは!
配信されたこの曲のジャケットは、ちょっと微妙だし、タイトルの「ピッコロ虫」というのもよくわからないし、「わかってないな下を向いて/審査をするのはよくないぞ/小指の縫い目は消えなそうだが/再来年はやるぞ」なんて歌詞もわかったようなわからないような感じだが、歌はすごく耳に残る。心の叫びが伝わってくる。
7月28日(土)
小林秀雄賞と
新潮新人賞の最終候補の下選考が、やっと一息ついた。
猛暑でもあるし、こういうときはビールやラムコークを飲みながら、リラックスできるものを見たり読んだりするに限る。
見ていたのは「
ワカコ酒」。原作は同名の
漫画で、ドラマは武田梨奈さんが演じている。空手の黒帯で、アクション女優っぽかった彼女の代表作の一つがまさかグルメドラマになるとは!
いわば「孤独のグルメ」のお酒版でほとんどが独り酒の話だが、料理が作られるシーンや食べる場面がかなり丁寧においしそうに撮られている。ネットフリックスで配信されている第2シーズンまでを一気見してしまった。ストーリーラインを必死に追わなくていいドラマを見ているときならではの幸福感というのがある。
読んでいたのはパリッコさんの「
酒場っ子」。著者のパリッコさんは、1978年東京生まれ。酒場ライター、DJ/トラックメイカー、漫画家/イラストレーターとのこと。
大衆酒場の雰囲気が好きで好きでたまらないというのが伝わってくる本。自分の知っているいい酒場を教えてやろうとか、B級グルメのほうが高い料亭よりおいしいとか、チェーン店はだめで個人店がいいとか、その手のうるささがまったくない。こういう本を威張らないで書くって意外と難しいと思う。お店を評価しようとしないのも確信的なふるまいなのだろう。
ピコピコカルチャージャパンというサイトで連載している「
パリッコの「大衆酒場ベスト1000」」という連載もすごい。狂気を感じさせる。ベスト100じゃないですよ、ベスト1000ですよ!
ああ、『酒場っ子』はこの連載をまとめたものなのかと思って本の奥付を見ると、「本書は書下ろしです。」とあって、またまた驚く。なんでわざわざ書き下ろした?
7月29日(日)
編集部のウェブデザイナーSさんの誕生日。このメルマガも、一くんとSさんで私の拙く粗い文章を直して整えて、配信してもらっている。
最近、コンテンツが増えてきた当サイト、バナーから何からデザインはすべて彼女がやってくれてます。いつも本当にありがとう。「亀のみぞ知る——海外文学定期便」と「リアルRPG 草原の国キルギスで勇者になった男の冒険」のバナー、ウィットが効いていて最高だと思う、ぜひ見てみてください。