松本隆さんといえば、伝説のロックバンド「はっぴいえんど」元ドラマーにして、「木綿のハンカチーフ」「さらばシベリア鉄道」「赤いスイートピー」など知らぬ者のない数多のヒット曲で知られる当代随一の売れっ子作詞家です。その松本さんが「無数に存在する歌の中でもひときわ高い峰に位置する」と敬して止まないのが、シューベルトの「冬の旅」。

「考える人」冬号では、ご自身が20年以上前につけられた口語日本語詩版「冬の旅」を新録中の松本隆さんにインタビュー。この曲の魅力と、2015年のいま、このクラシック曲に取り組む意図と意義をたっぷり語っていただきました。

 なぜいまシューベルトなのか、という問いに松本さんはこう答えます。
「音楽家としてはモーツァルトが好きです。ただ、歌とピアノでできることとしては、シューベルトが最高峰だと思う。登山家にとっての山みたいなものです。きれいなメロディがあれば詩をつけたくなる」
 ただこの曲、けっして希望にあふれた曲ではありません。むしろ、生きることに不慣れな、老年の心境をもつ若者が、死に場所を求めてさまよう辛い歌なのです。でも、だからこそ美しいのだと松本さんは語ります。
「絶望というのは美しい。きちんと表現するとこんなにも美しい。大切なのは、絶望を忌み嫌うのではなく、見つめること。絶望は誰にでもあるのだから、目を逸らさないで見なさいとこの曲は言っている。そういうものを知っていて生きるのと、知らずに生きるのでは、残りの人生の生き方が少し変わると思う。少なくともぼくは、そういうものを知りたいと思う」

 さらに松本隆さんは、クラシックを再演し続ける努力が大切な理由を、とても美しい言葉で語ってくださいました。それはいったい何だったか、ぜひ本誌をお読みください。

* 松本隆現代語訳版「冬の旅」CDは2月24日、学研パブリッシングから発売になりました。3月22日にはトッパンホールで松本さんのトークもついたコンサートが開かれます。