この号で最終回となった2つの連載の書き手には、3つの共通項がある。2つの連載とは、永田和宏さんの「生命の内と外 ホメオスタシスの謎」と、大河内直彦さんの「新地球紀行」である。お二人とも京都大学のご出身であり、講談社が主催する賞の受賞者でもある。

 永田さんは2013年に『歌に私は泣くだらう―妻・河野裕子 闘病の十年―』(新潮社)でエッセイ賞を、大河内さんは『チェンジング・ブルー―気候変動の謎に迫る』(岩波書店)で2009年の科学出版賞を受けている。

 いま、サイエンスをテーマにした本は数多く出されている。が、多くの場合、聞き書きの形をとるか、専門書に近い難解な一般書になっているケースがほとんどである。現役の研究者で一流の文章を書ける人はそう多くはないのだ。

 このお二人は、受賞歴からもわかるように、その稀な存在である。ただ、読者にとっては残念なことだが、3つ目の共通項である「寡作な著者」(一般書)でもあるのだ。永田さんは、戦後日本を代表する歌人の一人でもあり、歌集をはじめとした歌周辺の著書は数多いが、サイエンスの本としては意外なことに、『タンパク質の一生 生命活動の舞台裏』(岩波新書)だけだ。大河内さんは、デビュー作でいきなり受賞した上記の作品と、新潮新書『「地球のからくり」に挑む』があるのみ。

 ここからは、宣伝になるのだが、今回で終了した2本の連載は、今年中にはいずれも単行本になる(予定だ)。永田さんも大河内さんも、忙しい研究生活の合間を縫って、現在、大幅加筆、修正していただいているところである。
 ここで改めて2つの連載の内容を簡単に説明しよう。「生命の内と外 ホメオスタシスの謎」(永田和宏)は、生命の特徴とは「閉じながらも開いている」機能を持つことで、「膜」を通して必要なものを摂取し、不必要なものを拒み、あるいは排出して、身体(生命)を維持していく「恒常性」(ホメオスタシス)をテーマにしている。
 大河内直彦さんの「新地球紀行」は、ひとことで言ってしまえば、「地球の履歴書」だ。海、川、火山、南極、地形などを通して、地球の成り立ちと現在を興味深く語ってくれる。この惑星がいかにして生まれ、その履歴に現在の地球が影響されていることがわかる。
 年内に出版予定のこの2冊は、一流の科学者であり、一流の書き手でもあり、おまけに寡作のお二人が満を持して出す、とても魅力的なサイエンス本となること間違いない。