今年もたくさんの連載が始まりました。担当編集者のコメントとともに総まとめ! 冬休みの読み物としていかがでしょうか。

未来を思い出すために

ドミニク・チェン

 「未来を思い出すために」というSF的なタイトルで始まり、ちょうど千秋楽を迎えたのが、ドミニク・チェンさんの連載です。楽しみに毎回読んでくださった方は、その熱量と毎回の分量に驚かれたことと思います。同時に、一度読み始めるとその先を知りたくなる。どこに自分を連れていってくれるのか。そんなドライブ感を楽しんでいただけたのではないでしょうか。わかっている未来であっても、どんな結果であっても私たちは何かをやることがあります。それはまさに人生です。死ぬとわかっていても私たちは生きる。この瞬間を生きる。そのための道のりを、ドミニクさんは模索しているのかもしれません。

未来を思い出すために ドミニク・チェン

この人が触れたものはおもしろくなる――そんな人は稀少だが、そのひとりが「ドミニク・チェン」かもしれない。「情報」を専門の対象として、時に教壇に立ち、時に能や糠床でそれを表現し、時に技術化して新たなチャンネルを創りだす。「クリエイティブ・コモンズ」「フリーカルチャー」「ウェルビーイング」「シンギュラリティ」「プロクロニズム」「謎床」――世界を行き来しながら、思考の新たな枠組みを生み出す、気鋭の「思想家」の誕生だ。身体と情報が交差する世界の来し方・行く末を記すべく、連載をスタートする!

にがにが日記―人生はにがいのだ。―

岸政彦

 「本を捨てる、ということは、これまでの自分の人生を整理して、残り少ないこれからの人生をどうするかを決める、ということと同じだ。私はたぶんこの先、沖縄と生活史以外の本は読めないし、書けない。」(1月15日
 「『ほかのひとに対して不公平になるから』という言葉は、呪いの言葉だ。もうひとつ、『何かあったときにどうやって責任をとるのですか』も、きわめて大きな効力を持つ呪いだ。」(1月16日
 この細やかでビターでユーモアにあふれた視線こそ、今注目の岸政彦さんの本領ではないでしょうか。今年も小説『図書室』や『はじめての沖縄』、『マンゴーと手榴弾』で大活躍だった著者の断続的な日記を連載中です。

にがにが日記―人生はにがいのだ。― 岸政彦

『街の人生』や『断片的なものの社会学』という、マイノリティーへの長年の聞き取り調査を軸とした著作が話題になる一方、小説「ビニール傘」は芥川賞候補作に。いま一番注目されている社会学者の多忙な日々の記録。

カラスの悪だくみ

松原始

 『カラスの教科書』の爆発的人気以来、『カラス先生の補習授業』『カラス先生のはじめてのいきもの観察』などの著作を上梓された、「カラス先生」「カラス屋」などカラスのことはこの人に聞け!という存在になっている松原さん! そんな日本はどこへ行くのでしょう!? ついに、カラスのみならず、鳥類全体についての風変わりなお話を縷々書いていただくに至りました。タイトルは「カラスの悪だくみ」。意図しているわけではないのにどこにいっても悪者扱いのカラス。そんな鳥たちの文化資本としての存在に目を向けてみよう。なんてことを目的にしたタイトルです。引き続きおたのしみに

カラスの悪だくみ 松原始

カラスのことなら松原始さんに聞け!
そうなったのは迷著、もとい名著『カラスの教科書』の刊行からでしょうか。
カラスのみならず鳥類全般に詳しい松原さんに、カラスのこと、鳥と人間とのあいだの関係について、など綴っていただきます。ぎっしりたっぷりカァカァと♪

食べる葦

松本仁一

 世界一うまい羊肉はどこで食べられるか、ご存知でしょうか。
 チグリス川でとれる鯉料理の絶妙な塩加減、ガーナで食べられる最高のお餅の味、パパイヤだけの昼食、そしてモロヘイヤスープの出汁はウサギに限る等々、アフリカ、そして中東でながく暮らした著者がこれまでに味わった「美味」の数々は、そのまま「国家とは何か」という問いへと繋がっていきます。そして戦場でも人はものを食べずには生きていけないのだという当たり前の事とその過酷さに、今更ながらにハッとさせられます。
 世界一うまいと著者が太鼓判を押した羊肉は、今は食べることが出来ません。それはなぜなのか。お読み頂ければ幸いです(本連載は、2019年に新書として刊行予定です)。

食べる葦 松本仁一

世界一うまい羊肉、チグリス川の鯉、ソマリヤのパパイヤ――世界中を駆け巡るジャーナリストが、戦場で、あるいは平和だったあの街で、口にしたもの。それは「国家」そのものだった。食から見える世界の真実。

短篇小説を読む

 スマホやPCでひと息に読んでいただける長さの小説を、抜粋ではなくまるごと一篇お届けします。
 最初の作品として選んだのは、短篇の名手として注目されるレベッカ・マカーイの「赤を背景とした恋人たち」。21世紀のニューヨークにタイムスリップしてきたヨハン・セバスチャン・バッハをめぐる物語です。新潮クレスト・ブックスより刊行された短篇集『戦時の音楽』収録の、マカーイらしい歴史への洞察や繊細な人間観察に加え、ひときわユーモアにあふれる一篇です。訳者の藤井光さんによる「訳者まえがき」もあわせてお楽しみください。
 「Webでも考える人」では今後も注目の短篇小説をご紹介していく予定です。

短篇小説を読む

通勤・通学電車のひとときに、ちょっと手の空いた隙に、現実逃避したくなった瞬間に、一瞬で異世界に連れて行ってくれる短篇小説をどうぞ。

往復書簡 「小説⇔演劇」解体計画

滝口悠生,松原俊太郎

 『死んでいない者』で芥川賞を受賞した小説家・滝口悠生さんと、「忘れる日本人」「山山」を発表し、劇団をもたず演出もしない劇作家として話題の新鋭・松原俊太郎さん。異なるジャンルで活躍する二人の作家が、小説や演劇について、そして創作や鑑賞のめぐるさまざまな問題にも考察を広げていく、刺激的な往復書簡です。
 お二人が出会ったのは2017年12月、京都芸術センターのプロジェクト「演劇計画II」の一環として行われたトークイベントでした。このプロジェクトで松原さんは、3年がかりで「上演を前提としない」戯曲の制作に取り組んでおり、トークイベントはその戯曲「カオラマ」の第一稿の公開にあたって開催されたものです。
 松原さんは連載半ばの9月1日に、大幅に改稿した「カオラマ」第二稿を発表、そして1月には完成稿が発表されます。作品の完成を受けて、連載は2019年3月に完結の予定です。

往復書簡 「小説⇔演劇」解体計画 滝口悠生,松原俊太郎

『死んでいない者』で芥川賞を受賞した小説家滝口悠生さんと、劇団をもたず演出もしない劇作家として話題の新鋭松原俊太郎さんによる、小説と戯曲の境界に生まれるスリリングな対話。

亀のみぞ知る―海外文学定期便―

柴田元幸

 前世は亀だったと確信している、という翻訳家の柴田元幸さんが、海外文学の最前線を毎月紹介します。これも海外文学??と思わせる、渾身の変化球にも注目です。
 リチャード・パワーズレアード・ハントレベッカ・ブラウンなど、日本でも人気の作家による最新作のほか、奇才ブライアン・エヴンソンが先輩作家レイモンド・カーヴァーへの思いを綴った本や、19世紀の作家ジョゼフ・コンラッドを21世紀的に読み解く評論とアンソロジー、そして“自分を郵送した男”(ってどういうことだ?と思った方はこちらをお読みください)をめぐる本まで、とにかく柴田さんが面白いと思ったものを何でも取り上げます。
 未訳の注目作についていち早く知ることができるだけでなく、永遠に翻訳されることのなさそうな本の内容までしっかり味わえる、まさにここでしか読めない特別な海外文学案内です。

亀のみぞ知る―海外文学定期便― 柴田元幸

柴田元幸です。この場では主として海外文学について、新しく読んだ本や仕入れた情報などを紹介していきます。で、なぜ「亀」かとゆうと、MONKEYなぞという雑誌の責任編集を務めてはいるものの、前世は亀であったと確信しているからです。

リアルRPG 草原の国キルギスで勇者になった男の冒険

春間豪太郎

 昨年、ノンフィクション界に颯爽と現れた28歳の冒険家、春間豪太郎さん。行方不明になった友人を探しに単身フィリピンを訪れたのをきっかけに、冒険の魅力に開眼。その後、自身の冒険譚を綴った5chのスレッドなどが話題となり、2017年に『-リアルRPG譚-行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険』を上梓し話題を呼びました。
 冒険のコンセプトは〈リアルRPG〉。動物たちとともに見知らぬ土地で様々な困難を乗り越えていく様は、さながらポケモンやドラゴンクエストのようです。今回の舞台は中央アジアの秘境・キルギス。愛馬のセキルとともに広大な高原地帯を駆け巡ります。ドローンなど最新ガジェットも駆使した、新時代の冒険譚にご注目ください。

リアルRPG 草原の国キルギスで勇者になった男の冒険 春間豪太郎

春間豪太郎、27歳。冒険に取り憑かれた男が渇望するもの、それは「RPG」のように自由で広大な世界だった! 動物たちを引き連れ、様々なスキルや最新ガジェットを駆使しながら幾多の困難に挑め!! 今回の舞台は美しい高原地帯を有するキルギス共和国。新時代の冒険譚がここに開幕!!!

「反東大」の思想史

尾原宏之

 いや、東大が嫌いなわけではないんです。実際、東大出身の素晴らしい友人もたくさんいるし、尊敬できる方々はさらにいっぱいいます。別に受験で落とされたわけでもありません。それなのに、このモヤモヤ感はどこからくるのか……。
思想史家の尾原さんは、このモヤモヤ感の根源に、東京大学そのものではなく、「東大的なもの」があると喝破します。では、その「東大的なもの」とはいったい何なのか。それに対峙するためにはどうすれば良いのか。連載を通じて明らかにしていく予定です。

「反東大」の思想史 尾原宏之

なぜ日本には強靭なカウンターエリートが存在しないのか? 「東大」を頂点とする一元化された大学教育システムは、いかなる問題を抱えているのか? 福澤諭吉、三宅雪嶺、原理日本、全共闘……「東大的なもの」に反旗を翻した思想家たちの150年史から、「知の制度」の構造的欠陥を問う。

インドの神話世界

沖田瑞穂

 神話学ってどういう学問なのだろう?
 といえば、その神話が何を語っているかを考えること、そして「解釈」すること、だと言います。そもそも日本で神話学者を名乗る人は数人だそうです。そのひとり、沖田さんが初回、手始めに思索されたのは、私たちがつい夢中になってしまうゲームです。神々や英雄たちが数多く登場しますが、その意味や背景は何でしょうか。インド神話を専門にされているため、3回目からは大ヒット映画『バーフバリ』の背景に見え隠れする神々の足跡にも迫ります。読めばゲームや映画を見る目が変わります。人気の連載がますますヒートアップ、お楽しみに。

インドの神話世界 沖田瑞穂

「これって、映画『バーフバリ』のこと?」そう思った方は正解です。あの大ヒット映画を、インドの神話で読み解くと違う姿が見えてきます。古くは毘沙門天、新しくはゲームのキャラクター、とインドの神さまたちは意外に日本にいらしているのです。神さまたちの織りなすそんな綾を、専門の神話学者が読み解く新連載、スタートです。