随筆 小林秀雄

二十九 小林先生の酒

池田雅延

小林秀雄先生は、酒がたいへん好きだった。それも、日本酒である。召し上がるときは、必ず燗(かん)にされた。日本酒は燗にして飲むようにできている、燗にしてこそ味が映えるのだと言われ、冷や酒や冷用酒に手を……

 

イタリアン・エクスプレス(58)

ちょっと文房具屋さんに行ってくる

内田洋子

一冊脱稿すると、整理整頓。資料の本や雑誌、メモを端から処分している。無機質な書類の中に、セピア色の地にくすんだ色の花模様の紙が見えた。色も花柄もピントが曖昧でいかにも旧時代的なその紙は、贈り物用の包装……

 

独占完全版 『流転の海』完結記念・宮本輝12000字インタビュー  聞き手・堀本裕樹

第1回 大きな人間の、大きなドラマを書きたかった。

宮本輝,堀本裕樹

自らの父をモデルにした松坂熊吾とその家族の波瀾万丈の人生を、戦後の時代を背景に描く自伝的大河小説「流転の海」。執筆開始から37年、第九部『野の春』の刊行で、ついに完結を迎えました。37年間を振り返って……

 

考える四季

鳥類学者は恐竜をかく語りき

川上和人

憚りながら、春先に「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」という本を上梓した。恐竜は恐竜学者に任せておけばよかろうと思う方もおられるだろう。しかし、現代においては鳥類学者こそ率先して恐竜を語るべき理由がある。……

 

未来を思い出すために

Vol.10 学びの円環

ドミニク・チェン

ベイトソン父娘の双方向のメタローグは、父と娘が互いの存在を拠り所とし合いながら、それぞれの思考のみならず、関係性そのものを変化させるような営みだった。それは決して、ただの架空の思索ではないし、一時的で……

 

分け入っても分け入っても日本語

「バリカン」

飯間浩明

語源を探究する苦労について語るとき、「バリカン」についての話は外せません。理髪店に行って、髪の後ろや横をバリカンで一気に刈ってもらうのは気持ちのいいものです。この「バリカン」という器械の名称がどこから……

 

亀のみぞ知る―海外文学定期便―

(2)木の讃歌――リチャード・パワーズの新作

柴田元幸

誰も聞いたことのない音楽を作ろうとした男の話である前作『オルフェオ』(2014、邦訳新潮社)が素晴らしかったので、もちろん本格的でない作品など一冊もない作家ではあるけれど、やはりリチャード・パワーズの……

 

「Webでも考える人」トークイベント

第2回 イギリス人は忘れない

國分功一郎,ブレイディ みかこ

先ほどのブレイディさんの話を聞いて思い出したのは、2年前の2015年、「立憲デモクラシーの危機と東アジアの思想文化」というシンポジウム(その1)(その2)でご一緒させていただいた時の、憲法学者……

 

最後の読書

11 現代語訳を軽視するなかれ

津野海太郎

せっかく老人になったのに古典を自在に読みこなす力がない。しかし、そんな私にだって、伊藤比呂美のように、活字化された「説経節」をそれなりに気を入れて読んだ経験がないではないのですよ。という意味のことを……

 

随筆 小林秀雄

三十八 教養とは何か

池田雅延

小林先生は、今から六十年以上も前、昭和二十九年(一九五四)の初めに「読書週間」と題した文章を書き、そのときすでに本が多過ぎる、本という物質の過剰が、読書という精神の能力を危険にさらしていると言った。が……

 

食べる葦

世界一うまい羊肉

松本仁一

アラブ世界で「肉」といえば、それはヒツジ肉である。豚肉はイスラム教でタブーとされていて、食べることはおろか、触ることも許されない。私が住んでいたエジプトでは、ごく限られた場所でマイノリティーのコプト教……

 

短篇小説を読む

レベッカ・マカーイ「赤を背景とした恋人たち」訳者まえがき

藤井光

新潮クレスト・ブックスより6月刊行の新刊、レベッカ・マカーイ『戦時の音楽』(藤井光訳)から、「赤を背景とした恋人たち」をお届けします。新潮クレスト・ブックス所収の短篇小説をウェブ上で全文掲載するのは、……

 

未来を思い出すために(3)

Vol.3 ゲームの環世界

ドミニク・チェン

在日フランス人のコミュニティには、純フランス人(そのような定義自体が不可能なほどフランス国家は多様な民族によって構成されているが)以外にも、50カ国以上の国籍の子弟が集まっている。そこには様々な言語的……

 

御つくりおき――京都のひととモノとのつきあいかた――

10 三十三間堂西筋「WESTSIDE33」で命の水が溜められる薬缶を鍛えていただく

入江敦彦

ときどきTVでラグビーを観ます。ザッピング中にたまたまやっててほかに観るものがなければ程度の興味ですが。というか正確にはラグビーを観るのではなくラグビー選手を観ている。いや〝ウホッ〟な目で眺めている……

 

イタリアン・エクスプレス

越えていいのか、その線を

内田洋子

南部イタリアへ行った。道は、一本。土日には公共交通機関が休み、という一帯である。360度、広大な農地があるだけだ。「最寄りの町で開催されるバーゲンに合わせて、日曜日に行きに一本、帰りに一本の臨時電車が……

 

未来を思い出すために

Vol.5 論理と身体の言葉

ドミニク・チェン

吃音というバグを抱えながら、少年のわたしはある時から書き言葉の世界に没頭した。それは執筆という、時間をかけてエラーを修正しながら完成させられる行為を通して、言うことを聞かない身体から解放されるような……

 

往復書簡 「小説⇔演劇」解体計画

(1) 小説と戯曲の違いって何?

滝口悠生,松原俊太郎

『死んでいない者』で芥川賞を受賞した気鋭の小説家・滝口悠生さんと、「忘れる日本人」「山山」を発表し、劇団をもたず演出もしない劇作家として話題の新鋭・松原俊太郎さん。京都芸術センターの「演劇計画Ⅱ」と……

 

考える四季(30)

「オトナ」と「かあちゃん」のはざまで

伊藤亜紗

7月に初めて子ども向けの絵本を出版した。『みえるとかみえないとか』(アリス館)という本で、私の『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)という本に、ヨシタケシンスケさんがストーリーと絵を……

 

考える猫のその日暮らし

自由とは……

大高郁子

兵庫県生まれ。イラストレーター。 京都精華大学デザイン学科卒業。 季刊誌「考える人」の連載「向井万起男のどんな本、こんな本」の挿絵を担当。 主な仕事に、吉田武著『はじめまして数学』『はじめまして物理……

 

「Q&A的 小説作法講義 ――『孤独の歌声』から『永遠の仔』『悼む人』、最新作『ペインレス』まで」

第1回 「クラシック」と「アート」を行き来する

天童荒太

2018年5月29日、神楽坂のla kaguにて、『永遠の仔』『悼む人』等のベストセラーで有名な天童荒太さんをお招きして行われたイベント「Q&A的 小説作法講義」。4月の刊行以来高い評価を得ている……