第三回となる今年の河合隼雄物語賞・学芸賞はそれぞれ、中島京子さんの『かたづの!』(集英社)と大澤真幸さんの『自由という牢獄 責任・公共性・資本主義』(岩波書店)に決まりました。

『かたづの!』 は、江戸時代唯一の女大名の波瀾万丈の人生を、羚羊(かもしか)の一本の角(秘宝・片角となる)の目から語るという中島京子さんにとって初のファンタジー作品です。 選考委員の一人、宮部みゆきさんは、角という〈モノ〉が語ることによって史実が物語になった。これぞ物語の力であると評しています。そして中島京子さんは受賞の言葉のなかで、「書きあぐねた私を救ってくれたのは、まさに『物語』でした」として、遠野の「片角様のお叱り」と「河童八戸起源説」というふたつの物語が導いてくれたと語ります。

 学芸賞に選ばれた『自由という牢獄 責任・公共性・資本主義』は、社会学者である大澤真幸さんが、「自由という難題」に正面から取り組んだ論考です。自由な社会に生きているはずなのに、どうして牢獄のように息苦しいのか。それは私たちが「過剰な自由」を生きているからではないのか。大澤さんはそう問いかけます。
「かつて、哲学者たちは、人類の歴史の目的は『自由の王国』にあると考えた。とすれば、われわれはすでに、その目的の地に到達しているはずではないか。(中略)ところが、ここは、どう見ても王国ではない。この閉塞感は、むしろ牢獄のそれである。
 だが、何が問題なのか、それが分からない。本来、自由が抑圧されている状態が牢獄である。溢れるほどの自由があるのに、どうして牢獄になるのか。普通、われわれは、回答がわからない――問題は自明だが回答がわからない、と思っている。しかし、真の謎は何が問題なのか、である。」
 受賞の言葉で大澤さんは、この物語は、まだ終わってはいないと語っています。その知的探求はこれからも続き、社会に深い問いを投げ続けることでしょう。