夏号より梨木香歩さんの新連載「ナイティンゲールの梟(ふくろう)」が始まりました。
 梨木さんには今までいくたびか小誌にて連載をして頂いており、それぞれ『ぐるりのこと』『渡りの足跡』『エストニア紀行』という本にまとまっています。

 今回の連載は、待望の小説です。
 主人公・阿方由記子(あがたゆきこ)は、若かりし頃、英国のオークァム・ウォーターという貯水池周辺の環境を保護するための団体で、ボランティア・スタッフとして活動していました。
 今から二十年ほど前、阿方はある市民団体の招待で、英国の湖とそこにかかわる人々についての講演をすることになりました。講演を終えた後、聴衆のひとりからある絵本を手渡されます。その絵を描いていたのは、偶然にもかつて同じ「塾」の同窓生で、絵本を手渡したのはその同窓生の姉であり、絵本の著者でもある人物でした。
 後日、阿方はその姉に連絡を取ります。画家である弟の消息などを話しているうちに「ナイティンゲール」の名前が出て、阿方はさらなる運命のようなものを感じることになります。
 阿方にとって「ナイティンゲール」は、かつての懐かしい思い出に触れたり、〈日常をいかに深く生きるか〉という課題を考えたりするときに外せない、大きな意味をもつ名前なのです。キーワードは「nursing」。園芸用語の「養生」も、看護する行為も英語では同じです。
「ナイティンゲール」がいったいどういう人物だったのかという謎を少しずつときほぐしながら、主人公とその仲間たち、そして英国で見た豊かなる自然とのかかわりを紡いでいく、梨木さんの意欲作。ぜひお楽しみに。