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「断捨離」や「終活」に注目が集まる中、新年に身辺整理に着手した村井さんのエッセイがよく読まれています。返り咲きの第1位です。
クラシック音楽と社会の関係をめぐる論考を、ナクソス・ミュージック・ライブラリー(NML)の音源を試聴しながら読める新しい試みです。
今回は音楽をめぐる小説2冊を紹介。どちらの作品にもビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンが登場します。犬好きにもたまらない内容です。
編集長 今週のメルマガ
 
ポルトガルの注目作家、ジョゼ・ルイス・ペイショットさんが昨年11月に来日した際に開催された中島京子さんとの対談「土地の記憶、犬たちの瞳」を掲載しました。

ペイショットさんの著書『ガルヴェイアスの犬』(新潮クレスト・ブックス)の舞台は、ポルトガル・アレンテージョ地方の小さな村。1984年のある日、空から巨大な物体が落ちてきた後に起こった様々なできごとが、たくさんの村人たちの視点で描かれていきます。この小さな場所の物語がいかに普遍的なものでありうるのかが、中島さんとの対話によって解き明かされます。

1月27日(日)
岡田利規さんの劇団「チェルフィッチュ」の、『スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド』を観に、三軒茶屋のシアタートラムへ。

2014年に初演した『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』のバージョンアップ公演。初演時は、戯曲は読んだが、公演は見ていない。

コンビニエンスストアを舞台に、バッハの平均律クラヴィーア曲集第一巻にあわせて、物語が語られる。この作品は、チェルフィッチュの中でも物語の構造がわかりやすく、俳優のダンスのような動きも激しく、ユーモアもあって、かなり間口が広いのではないか。俳優の熱演も良かった。

ご案内のメールにあった岡田さんの言葉。

「コンビニエンスストアが舞台であり、テーマであり、かつ主人公でもあるこの演目の、もともとからして長いタイトルに、さらに、ソリッド、というのを一単語加えて、別バージョンにして上演します。この新しいバージョンは、お話の内容は、オリジナルと変わりません。スタイルが、大幅に変わります。シュッとした感じになります。シュッとさせて、より空虚な上演にしようとしています。その空虚さを介して、現在の東京のお客さんにアクセスしてみたい。」

そしてパンフレットにあった岡田さんの「演出ノート」の言葉。

「上演が観客に与える効果は如何なるものか、とか、作品の主題が2019年の東京でどう響くか、といったことは、そういうのをいつもはとても気にしているのに、今回は気にしてない。この上演がお客さんにどう届くのか、今回、本当にわからない。楽しい。

せりふをしゃべっているのに音楽とコミュニケートしてもいる身体。そして身体と合わせると音楽が、ディテールが際立って聞こえてくる。身体には独特の質感がそなわる。その質感をもっと大事にしたくて、主題よりも大事にしたくて、五年前に初演した『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』を、『スーパープレミアムソフトWバニラリッチソリッド』につくりかえているんだとおもう。」

岡田さんの新しいモードを感じる。ここ数年、形式的なものと向かい合った岡田さんが次にどこに向かうか、つくづく楽しみである。今年10月に京都で新作公演があるそうだ。

1月28日(月)
昨日のの活動休止の報に、静かに揺さぶられている。娘が小学校高学年から中学校時代にかけて、「嵐」というグループは家族にとっての太陽だった。

今まで私も妻も若いころはジャニーズ事務所のタレントに夢中になったことがなかったのに、楽曲の良さ、ダンス・パフォーマンスの見事さ、バラエティーへの対応力に驚き、なんか人生でキツイことがあるたびに、彼らの輝きに救われた。歌もダンスもトークももちろんもっとうまい人はいるだろうが、人を楽しませることを知り尽くしている5人の力は特別で、それぞれに魅力的な点がある。これがアイドルか、と思わされた。

30代後半になって家族3人で嵐のファンクラブに入った。コンサートに2回当たり、名古屋と国立に行った。ライブDVDも3枚自分で買ったほか、同僚で嵐ファンのFさんに自分の持っていないライブDVDを借りたり、同じく嵐ファンのYさんと3人でランチタイムにひたすら嵐の話をしたり。ジャニーズJr.のころからの5人の信頼関係のことを聞いて、ますます嵐というグループが好きになり、そして5人の仲の良さも好きになり、これが「関係性萌え」というやつなのか、と甘酸っぱい気持ちになった。娘を飛び越えて詳しくなった。

同じような経験をしている娘の父親は、おそらく私だけではない。娘のコミュニケーションのために、嵐を知っていたら、いつの間にか自分が夢中になっていたという話はかなり頻繁に聞く(そう言えば、「考える人」創刊編集長の松家仁之さんとも嵐の話をしたことがあった)。

なんとも言えず楽しかった。嵐が一家の共通言語だった。あの楽しさは何だったんだろう、人生の特別な瞬間だった、とたまに思う。

1月29日(火)
橋本治さんが亡くなった。強烈なショック。ショックが大きすぎて、まだ悲しみがダイレクトに来ない。しばらくしてから、とてつもない欠落感、これから先を生きていくことが恐ろしくなるような悲しみに襲われるのだと思う。

昨年6月に上顎洞癌(じょうがくどうがん)の診断を受けてから、入退院を繰り返しているとは知っていたが、「新潮」で次に書いていただく予定だった「大仏再建」、「正義の旗」のアイデアを聞いていたし、癌自体の治療はうまくいっていたとのことだったので、まさかこんなに早く亡くなるとは思わなかった。

橋本治さんは、高校時代に『桃尻娘』を読んでからもっとも影響を受けた作家の一人で、以前、メルマガでも紹介した『89』や『ひらがな日本美術史』は何度も読んだ。

2003年に「新潮」で担当編集者になってから、『小林秀雄の恵み』、『巡礼』、『リア家の人々』、『初夏の色』、『草薙の剣』の5冊の本を書いてもらった。中でも『巡礼』『リア家の人々』『草薙の剣』という、橋本さんにしか書けない3つの長篇小説をいただけたことが深く心に残っている。

橋本さんのように物事を捉え、芸術や芸能への敬意をもつ。その視線の獲得の過程こそが、自分にとっての編集者人生だったのかもしれないとも思う。

今は、西城秀樹が亡くなった後に橋本さんが「webちくま」の連載「遠い地平、低い視点」第49回「人が死ぬこと」で書いた文章が頭に響く。

奇しくも今日は、やはり15年ぐらい編集を担当し、4年前に亡くなった河野多恵子さんの命日である。まさか親しかった作家二人の命日が重なるとは思わなかった。

1月30日(水)
「考える人」2代目編集長の河野通和さんによる橋本さん追悼の文章が出た。早い。素晴らしい。(追悼文はNo.67に掲載)

2月1日(金)
「考える人」創刊編集長の松家仁之さんの橋本さん追悼文。ぐっとくる。

橋本さんは「考える人」の大恩人だと改めて思う。


 
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